狼とうさぎの1週間 44

髭と若が悪魔の元へと行った後、リアラとディーヴァの2人はさっそく消火活動に入った。
リアラは走り回って、『ダイヤモンド・ダスト』で吹雪を起こして炎を燃えている物体ごと凍らせ、『アイシクル』の氷柱を火を囲むように降らせて消していく。
ディーヴァも重いホースをずるずる引きずってリアラの手の追いつかない火をちょこちょこだが、消していった。
燃え盛る悪魔の炎も、少しずつだが鎮火していくが、それさえも間に合わないくらい奥はもうもうと燃え盛っているように見えた。

「リアラお姉ちゃ〜ん、きりがないよ〜」

「うん…それにしても暑い…」

「水、かけよっか?」

「それじゃ私がずぶぬれになっちゃうで…水…?」

と、火に向かって勢いよくホースの水をかけるディーヴァを見て、リアラは思いついた。
そしてホースの水が出ているすぐ横に降り立った。

「ん?使うの?」

「最大水力で水を大きな炎にかけるの。水に私の魔力を纏わせて、この水を全て水と氷の消火剤に変えて一気に消すわ」

「おっけー!いくよ!!」

ディーヴァが最大水量のボタンを押すと、体が吹き飛ばされそうになるほどの威力で水が噴き出た。
そして真横に立っていたリアラがそれを支えながら、魔力をこめた右手を水にかざした。
水が絶対零度の氷水となって炎に突き刺さる。
もともと炎に強い水の特性と、リアラの全てを凍てつかせる氷の力、いいところだけが残ったそれはいとも簡単に燃え盛る炎を消し止めた。
2人はニコリと笑いあうと、ハイタッチをかわした。
ギュイィィイーン!ギュオン!!
その時、悪魔と戦っているであろう髭と若達がいる方向からギターの音が響いているのに気がついた。
確かネヴァンという名前のギターの形をした魔具だった気がする。
リアラは派手にやってるなあ、と短く嘆息し、ディーヴァは頭の上にクエスチョンマークを浮かべてダンテ達のいる方角を向いた。
そして音が止んだと思ったら、悪魔の気配が濃くなって来た。
ビリビリとリアラの第六感が悪魔の到来を伝えている。
ダンテ達が取り逃がしたのかもしれない。
あの人達はたまに油断したりわざと攻撃を受けるような癖があるからだ。

「来る」

「え…?」

リアラはレイザードを武器化状態にして来たる者を迎え撃つべく構えた。
雄たけびをあげながらところどころ焦げて肉の溶け落ちた気持ちの悪い悪魔がすごい形相で迫ってくる。
その体は最初に見た時より大きく巨大化していた。

「避難してて!」

「ひぃぃぃい!言われなくても!!」

ディーヴァは悲鳴をあげながら後ずさり転がるように避難した。
リアラはそれを横目で確認すると勇猛果敢に悪魔へ突進していった。
リアラに向かって悪魔がこれ以上ないほどの大きな口を開けた。
炎攻撃だ。
リアラはわかっていたようでまだ有り余る魔力を駆使して氷の結界をその身にまとわせた。
これで少しくらいの炎は防げる―――そう思った時だった。

「リアラ!ダメだ!!」

「避けろっ!」

「えっ?」

髭と若の叫びがこだまし、一瞬そちらを見るとこちらに向かって走ってくる彼らが見えた。
気がついた時には、想像以上に大きな炎の塊がリアラの目の前に迫っていた。
リアラは氷属性を持つ半魔なため、炎攻撃が弱点とする。
普段使うガスコンロの火などは平気なのだが、たとえば炎獄の主、ベリアルの炎のような大悪魔の使う炎は特に苦手だ。
それが小さな悪魔の炎ならまだいいが、このように大きな炎の塊など自分の結界では防ぐことが出来ないかもしれない、そう思った。

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