狼とうさぎの1週間 40

翌朝、2泊3日泊まったネロは悪魔の書類を手にフォルトゥナへと帰っていった。
実を言うと持ち出し厳禁の禁書なのだ。
とは言っても、教団が無くなった今、咎める者はいない。
だが、一般人が手にしたら何かよくないことが起こるかもしれない物を外には置いておけないだろう。
その実、中身は天使の言語なのでディーヴァはもっとゆっくり読みたかったともらした。
リアラは、いつか一緒にフォルトゥナに行って読めばいいよ、と言い、ネロはそれに同意して去っていった。
そして今は午前中のお茶の時間である。
ディーヴァの淹れたローズヒップのアイスティーに、お茶のお供はうさぎの形のリンゴ。
リアラが「どうせならリンゴはうさぎにしよう」と、切ってきたのだ。
我が家には今、『狼』と『うさぎ』がいるのだから、悲観せず楽しむのも大事だろう。
久しぶりにゆっくりとティータイムを楽しみながら、過ごしていた。
その間、若と髭はリアラとディーヴァが楽しく談笑する声をBGMに、自分の愛銃のチューンアップである。
男のむさい声と違って女の…それも愛する者達の声は実に和む。

「RRRRR!!」

と、その場のふわふわとした時間を切り裂くような音がけたたましく響いた。

「ほわっ!?」

完全に油断しきっていたディーヴァが驚いて変な叫び声をあげる。
その際持っていたリンゴが手から滑り落ち、リアラがあわててキャッチした。

「お前、驚きすぎだな」

その様子に笑いながら髭が受話器を取り上げた。

「臆病な『うさぎちゃん』だから仕方ないよなー」

「ディーヴァちゃん、大丈夫?はい、リンゴ落ちそうだったよ」

「うぅ、ありがとう…」

生えた耳を、今更だが隠すように片手で抑えながらリンゴを受け取った。
やはりうさぎだからか、警戒心もちょっぴり強く、神経過敏になっているようだと、ディーヴァは自分でも感じる。
受話器を置いた髭がニヤリと笑ってこちらにウインクした。

「ダンテさん、合言葉つきなんでしょう?」

「ああ、すぐそこの公園奥の森で火災発生、数匹の悪魔が目撃された、だとよ。リアラ、どうだ?」

「…うん。確かに西に2キロ地点に悪魔5体ってところかな」

リアラは魔獣化や、呪いの半獣化していない通常でも耳がいい。
なのでダンテ達よりも悪魔の場所を察知するのに長けていた。
リアラは目を閉じ耳を澄ませて集中すると、悪魔の所在と数を特定した。
ちらりと隣を見ると、驚くことにディーヴァも耳をピンと西の方角へ向けて何かを探っていた。

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