狼とうさぎの1週間 31

テーブルの上にカレーライスとサラダ、そしてデザートの代わりにもなってリアラの好物でもあるメロンソーダフロートが並んだ。

「やっぱり甘い方が美味いぜ!」

早速食べ始める若が米粒を頬の端につけたまま言う。

「ふふ、良かったね」

ディーヴァは頬にくっついている米粒をとってやった。

「俺のは辛口だが、これもまた美味い。さすが俺のリアラだ」

「カレーなんかフォルトゥナじゃあんまり食べないから久しぶりだ…ありがとな」

髭とネロも至極美味そうにパクパクと食べ続けている。
そのみんなの光景をほほえましく思いながらリアラは一口目を食べた。

「…あれ?」

なんだろう。
辛口をよそったはずなのに、やけに甘く感じた。
もしかして…?
その鋭い嗅覚で部屋に漂うカレーの中から、ディーヴァの皿の物を嗅ぎとった。
リアラにしか出来ない芸当である。

「ディーヴァちゃんちょっと食べるの待っ!」

「ん?なぁに…辛っ!?」

遅かったようだ。
ディーヴァが一口目を食べると、その辛さにびっくりした。
ちなみにディーヴァは別に辛い物が嫌いなわけではないが、甘口だと思っていたため驚いたのだ。
しかし、驚いたことで、ディーヴァにはまたもやうさぎの耳が生えた。
ディーヴァは急いでメロンソーダフロートのアイス部分を口に入れて口の中を静めた。

「大丈夫かよ…」

若が心配そうにディーヴァの顔を覗きこむ。

「わっ!!」

なぜかそれに便乗した髭が突然立ち上がって叫んだ。
いきなりリアラを驚かせたのだ。

「ひゃあ!!」

リアラはそれにびっくりして飛び上がった。
もちろん、リアラにも狼の耳が生える。

「びっっっくりしたぁ…なんですか、もう…」

「ディーヴァだけ半獣化するのはかわいそうだろ」

初めて見るその光景にネロはびっくりした。
話には聞いたが、本当にリアラとディーヴァの頭に獣の耳が生えている。

「本当に生えるんだな…」

「「かわいいだろ?」」

髭と若がお互いの恋人の頭をぐりぐりと愛しげに撫でながらネロに見せつけた。
うん。
かわいさは認める。
でも…
ネロはリアラとディーヴァに申し訳なさそうな顔を向けた。

「オレ、多分リアラとディーヴァの皿を逆においたんだと思う。ごめんな」

「いいの、ネロのせいじゃないからね」

「そうそう。わざとじゃないんだもん、それにあたしは辛いの平気。ただちょっとびっくりしただけだよ」

「私に至っては完全にダンテさんのせいだから」

じとーっとリアラが髭をにらむ。
そしてディーヴァは今度はおいしそうに辛口カレーを頬張った。
謝っているネロに対し、髭と若は親指を立てて感謝した。

「いやいやグッジョブ、ネロ」

「よくやったな坊や。どさくさにまぎれて俺もいい思いが出来たぜ」

「何がグッジョブなのよ、若」

「ダンテのバカ!人事だと思って…」

「え、いや悪い…」

「ほら、言葉のあやだ。気にするな」

勝手なことを言って髭と若は女性陣に怒られている。
それにしても…。
ネロは頭の中でキリエを思い浮かべた。
思い浮かべたキリエには獣の耳がついている。
何がいいか考えると茶色のうさぎの耳が頭にフッとよぎった。

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