狼とうさぎの1週間 30

ネロは泊まることになった。
宿をとるから夕食も寝る場所もいらないと言うネロをリアラとディーヴァが止めたのだ。

「人数も増えたことだし今日はチキンカレーにしてみました」

リアラとディーヴァがスパイスからきちんと作ったカレーである。
鍋の中から漂う香りが食欲をそそり、ネロは思わず生唾を飲んだ。
鳴る腹の虫を抑えつけ、ネロは皿によそったりしている2人に近づいた。

「オレも手伝う」

「お客様なのに悪いよ」

「いいから。これ、運べばいいのか?」

遠慮するリアラの手をさえぎって、ネロは手伝いを申し出た。
こんな優しい若者は今時中々いないだろう。
リアラとディーヴァはネロに感心しながら、髭と若を見た。

「どっかの誰かさん達も見習ってくれればいいのに…」

「お前らの仕事とっちゃ悪いだろ?」

「味見くらいならしてやるよ」

「味見じゃなくてつまみ食いでしょ!…これだもんなぁ〜」

「少しくらい手伝ってくれたっていいのにね」

「若とオッサン、ほんとダメ人間…いや、ダメ半魔だな」

ため息と苦笑いをこぼしながら準備にいそしむ。
リアラがライスにカレーをかけながらネロに聞いた。

「あ、ネロは辛い方がいい?」

「そんなに味があるのか?」

「といっても、甘口と辛口だけど」

大盛りになっている皿と小盛りになっている皿をリアラに渡しながらディーヴァが言う。

「あたしとダンテのが甘口になってるの」

ちらりと鍋の中身をみやってからネロが言った。
辛口と甘口。
それぞれ入っているとのことだが、見た目的には全く同じ色をしているため、食べてみないとわからないかもしれない。

「ふーん、オレは辛口がいい。カレーってのは辛いもんだろ」

「わかった。じゃあ手伝いをしてくれる偉いネロにはお肉をいっぱいよそっとくね」

リアラが鍋の中にごろごろ浮かんでいる肉の塊をネロの皿によそう。

「あ、ずりぃ!」

「ダンテは手伝ってないもん」

ディーヴァはブーブー文句を垂れる若をいさめた。
そのやりとりを笑って見ながら、ネロは食卓にカレーライスのよそわれた皿を次々に運んだ。

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