狼とうさぎの1週間 28

その日の夕方になってネロが到着した。

「ネロ、ようこそ。わざわざ来てくれてありがとう」

親愛の証にとリアラがネロにハグする。
そのハグを受け入れながらネロは申し訳なさそうに眉を歪めた。

「悪い。もっと早く着けたはずなんだけど、ちょっと調べ物してたら遅くなっちまった」

その時、リアラの後ろからネロにものすごい勢いで抱きついてきた者があった。

「うわぁぁん、ネロが来てくれてよかったよぉぉお」

ディーヴァだ。
ハグではすまされないくらいの勢いだったが、ネロはその者がディーヴァだとわかっていたようでされるがまま抱きつかせていた。
実は、若とディーヴァがやってきて結構たっているので、ネロとは既に何度か会っている。
若は歳の近い友人であり、悪友であり、時にお仕置きを施す対象である。
そしてディーヴァのことは何度か交流を重ねる内に、妹のような存在になっているのだ。

「なんかあったのか」

ネロがディーヴァの頭をポンポンやりながらリアラに聞く。
よく見れば、リアラはやけに精根つきたような顔をしているし、ディーヴァは泣きながら縋りついているし、若は部屋の中で氷漬けになり彫像と化している。
そんな中でただ1人髭はケロッとして定位置で雑誌を読んでいた。
ネロの目にはその光景が異様に映った。

「全員やけにボロボロじゃねーか?…オッサンはいつもと変わんねぇみたいだけどさ」

リアラは何も言わずに苦笑して見せる。
そして雑誌を閉じた髭が玄関に歩み寄り、ネロに片手をあげてあいさつした。

「よう、坊や。まあ、ちょっとな」

「ちょっとなんかじゃなーい!」

「まぁまぁ。とにかく入って」

リアラは叫ぶディーヴァを必死になだめた。
そして首をかしげながらネロは中に入ったのだった。

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