スイーツまでの道のりは長い 15

もくもくと煙が立ち込め、燃えかすからでた炎がチロチロと残った草花を舐める。
その煙を髭が再び猛虎の姿になって、羽根と太い獣の脚で砂煙を起こし、吹かせたい場所へ吹き飛ばす中、ディーヴァが若に聞く。

「ねえところで何燃やしたの?
ていうかここほんとに魔界なのかな。ここまで危険なことほとんど起きてないよねー」
「ちゃんと魔界よ。なかなかの手応えの魔獣だっていたしね」
「ま、わからねぇのは仕方ない。ディーヴァは危ない目にあってねぇみたいだもんな、ディーヴァは!」
「お前はお花摘みしたり寝たりしてるだけだったんだからそりゃあそうだろ。
やれやれ、オレが陰でどんだけフォローしてるか…。散歩気分たあ、いい加減やんなるぜ」

リアラは苦笑しながら。髭はところどころ皮肉という毒を織り交ぜながら。
若は少し強めにディーヴァの頭を叩いて、苦言した。

「あてっ。
散歩気分だなんて…。って事は、みんなは危ない目にあってたの?
だめだよ、危険なことに首突っ込んじゃ!」
「「「はあ〜〜〜……」」」
「なんでため息?」

お前がいうな。
というのは、3人の心の言葉。

「もしかして若はいつもこうやって苦労してるの?」
「ああ、いつものことだぜ…」
「うわぁ」

気の毒そうなリアラに、若は遠い目をしている。
ディーヴァの方を2人で見れば、彼女は今髭に御執心。髭の顔を某ソフトキャンディのCMのようにいじり倒していた。

「わんこもーちもち、にゃんこもーちもち!うはぁ、もちもちしてるぅ!」

髭はとても迷惑そうだったが、おとなしくされるがまま。

「ディーヴァがパートナー相手だと、若、貴方苦労するわね。…たぶん一生」
「あー、まあな。
でも、苦労しても、もうオレはあいつじゃなきゃ満足できないからなァ」
「まるで依存性の高いドラッグみたいだな」

散々いじられた頬をほぐしながら、髭が戻ってくる。
その姿は魔獣ではなく人型で、表情も姿勢も若干ヨロヨロしているのを見るに、ディーヴァにいじられていたのがここ一番のダメージだったのかもしれない。

「お、やっと解放されたか」
「ああ、ちなみにディーヴァは燃えかすで火遊び中だ」
「おい火遊びさせるなよオレの大事なパートナー兼恋人だぞ」
「仮にも魔女だしそのくらい平気だろ?
それよりお前、ディーヴァに毒されてるな。そして甘やかしすぎてもいる。危ない傾向だ」

髭を注意したら、逆に髭にディーヴァへの愛を注意された。
甘やかしすぎ?スイーツ好きには、これくらいがちょうどいいと、若は思っている。

「んなに甘くしてないけど?危なくもねーよ。
だってたまに喧嘩もするし、考え方の違いでしばらく距離を置いたりもする。
ベタ惚れだと自負してるが、結構自由気ままな生活してるぜ。
お互い自分だけの時間だって持つようにしてるしな。
…つーか、兄貴だってディーヴァに甘いだろが。
ま、リアラをやたら甘やかしてるくらいだ、甘やかす事自体慣れてるんだろ?
こないだなんてほら……」

真剣にディーヴァとの生活を話していたと思えば、懐から数枚の写真を取り出し、髭に見せる。

「お、これはこれは……」

男2人で覗いているその表情は、ニマニマとしており、なんだか嫌な予感がし始めたリアラ。
2人の後ろに回り、そこにあった写真を覗くと…?

「きゃあ!いつ撮ったのよ!
こんなところでばかりカメラなんていうヒトの発明品使わなくていいわよっ!!」

自身がデレデレに甘え髭に甘やかされている写真や、キスする数秒前!な写真、そして髭を前に百点満点の笑みの写真etc…。
その時は良くても、改めて人に見られると恥ずかしく感じるシーンが、写真におさめられていた。

「いい写真だな〜♪」
「だろ?今ならこっちの笑顔の写真もつけて、な、なんと!!このお値段!!!」
「ネガもろとも言い値で買おう」
「よっしゃあ小遣いゲットだぜ」
「いやぁぁ!そんな写真で商売しないでよっ!!」

交渉成立。
2人が写真と金のやりとりをしているのを、リアラは真っ赤になって止める。

「なにやってるのさ。
どうせやるなら、バージルのとこも写真撮って彼に高額で売りつけないとでしょ」

そこに登場するのは、更に場をかき乱す、ディーヴァ。
親指をグッ!とさせて、いい笑顔。

「ディーヴァ、貴女もそっち派なの……」

戻ってきたディーヴァも、今回は髭と若についた。…リアラの味方はいない。

「悪いなリアラ、こればっかりは譲れない」
「美味しいおまんまのため、あたしも譲れない」
「右に同じく!」
「んもう…!
そんなことより、煙に巻かれてあいつが出て来たみたい。…追うわよ!」
「「「イエッサー」」」

ディーヴァは若に横抱きにされ、リアラは髭に横抱きにされながら、会話する女性陣。
ふと、ディーヴァの目がリアラの足に止まる。
そこにあるのは見覚えある赤で、自分の杖にはなくなっているそれ。

「そいえば、あたしのリボンだよね。それ」
「ん?ああ、今返した方がいいかしら?」

しゅるしゅる、解いてみせると、そこにあったのは無残に切り裂かれた服。そして陽の光に白く輝く素肌。

「セクシーダイナマイッ!?…どしたのこれ。パートナーにでも無理やり襲われそうになった?」
「そんなわけないでしょう?貴女のパートナーじゃあるまいし」
「それもそっか」
「おいオレをなんだと思ってやがる…」

こうなった理由を説明され、うんうんと頷いていたディーヴァは、再びリボンをリアラに渡し、握らせた。

「ちゃんと返してくれればいいからどぞどぞ使って?なんならうちのダンテのベーコ…マフラーでもいいよ。貸そうか?」
「それは…いいわ、暑苦しそうだもの」

暑苦しいのではなく弟とはいえ他の男の私物を身につける…という、嫉妬に狂う髭の目がこちらに向いたからである。
リアラはおとなしく再びリボンを巻いた。

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