スイーツまでの道のりは長い 12

「わ…、わざとじゃないんです!これは殺人事件じゃないの!未遂なの!!
だからブタ箱行きだけはくぁwせdrftgyふじこlp……!」
「死んでないのわかってるし、わざとじゃないのもわかってるわよ」
「え、あ、そ、そっかぁ…。ああ、よかった…!」

既に監獄の中にいる気分だったディーヴァも、リアラの言葉のおかげで晴れて自由の身の気分、シャバの空気は美味いぜぇ!と深呼吸。なんと気が早い。
だいたいそれでお縄につくのであれば、若や髭はとっくに捕まっている。
だが、だったらなぜ疑いが晴れた…?

「なんでわかったのかって顔してるな。
大方、お前の持ってるその薬箱からこいつが盗んだんだろ。
薬箱の蝶番が古くなって緩んでいるみたいだから、手癖の悪いリス魔獣如きにも蓋は開けられる。その上ディーヴァはその時花を摘んでいたそうだな。だから手が離せなくて、すぐに対処ができなかった。
さらに、いくら魔獣がこわいとはいえ、小さな魔獣相手だ。ディーヴァの事だから心を許し油断していたと考えられる。
そして蓋を開けて一番上にあるのは、一般魔獣でも見たことがあるかもしれない回復薬や栄養剤とは違う、赤くてやたら目立つ薬。明確な目標物があるならともかく、スリを働くだけならそれを手にする可能性が高い。
で、相手はリスの魔獣だから、溜め込むなら頬袋。だが頬袋には既に他の大きなものが入っている。おまけに遊んでいるとはいえ、俺達から逃げていて腹も空く頃…きのみか何かのように、齧って食べた、と推察する」
「おぅふ、兄貴…なんという推理劇」
「さすが私のパートナー、そんな聡明なところも魅力的ね…」
「惚れ直すだろ。
で、合ってるかディーヴァ?」
「すごーい!その通りだよ!
どこぞの体の小さな名探偵さんみたいだね。ぜひちっちゃいとらさんの姿で言って欲しかったなー!」

そうすれば見た目は子供頭脳は大人そのままだ。
ついでに髭でなく、これが少し色黒の初代だと、とある理由で作者が惚れる(トリプルフェイス最高!)

「あのねこの子、あたしの作ったお薬盗んで齧ったら、倒れちゃったんだよ。お薬って言っても、失敗作だけど…」
「失敗作を入れておく気持ちはわからねぇが、よほど即効性の強い毒薬だったんだな。まあ、死んでないのを見るに、そのうち目を覚ますだろうよ」
「魔獣は普通の生き物より頑丈だしな〜」
「たしかに若は殺しても死ななそう。さっきも相当のダメージだったでしょうに、すぐ復活したわよね」
「ふっ、愛と憎しみが痛みを凌駕してな…?」

リアラに蒸し返された話題により、ディーヴァは若から送られる恨みがましい視線にビビり上がった。

髭が鼻先をリスに近づけ、その匂いを嗅いでいる。

「くんくん、アーモンド臭はしない。赤いカプセルの中身は青酸カリではなさそうだな」

さすがにそんな危険物はもともと持ってない。

「けど、でかしたディーヴァ。ちょうどこいつを追いかけるところだったんでな。
頬袋の中に手を突っ込んで鍵を取り出すから、渡してくれるか」
「え?えー?何?鍵?どゆこと??」

よく分からないまま、その身を髭に差し出すディーヴァ。
ぱち。その瞬間、リス魔獣の大きなおめめが開く。
と同時、目の前の髭の、顔では一番弱いところ、鼻面にげっ歯類の特徴的な前歯が突き刺さる。

「い゛っ!?」

髭に予想外のダメージを与えたリス魔獣は、ディーヴァの手からするりと抜け出し、飛び上がる。
そして、若やリアラが慌てる目の前、草むらへと一目散に姿を消した。
ディーヴァはただそれを見送るのみ。

「また振り出しか。くそ、鼻が利かなくなる…いてぇ……」
「だいじょうぶ?
ディーヴァはなんでちゃんと捕まえとかないのよ…」
「ごめんなさい。
でも、毛皮ツルッツルで滑るから、多分捕まえておくのは無理だったかも…?気持ちよかったよ〜」

ディーヴァは天鵞絨のような触り心地に思い馳せるしまつ。だーめだこりゃ。

「その話はあとだ。とりあえず今度こそ奴を追うぞ」

ヒリヒリした赤くなった鼻を隠す様に俯き、髭がリアラを背に乗せる。
リアラは何も言わずただ一回頷いて、その背に跨った。

「俺達も行くぜディーヴァ!」
「はーい!
って…なんでこんな持ち方するのさ…!」

髭とリアラ組と同じ魔獣化した背中に乗せられるのでもなく、かといって人型時での横抱きでもない。なんと、米俵の様に担がれたではないか!
これも若によるディーヴァへの仕返しなのか。

髭の鼻を利かなくしたリス魔獣は、匂いで追って来る事は出来ぬと判断したらしい。
油断しているのか、ジャングルの中のだだっ広い花畑で毛づくろいして一休みしていた。
が、残念ながら鼻が利くのは、髭だけではない。髭の虎に対し、同じネコ科の獅子である若がいる。

他のスピード特化型魔獣が相手ならつゆ知らず、相手の独壇場であるジャングルの中、素早いリス魔獣について行くのは至難の技だったが、匂いさえ分かって入ればこちらのもの。
4人はすぐに追いついた。

「うらぁ!鍵返せ!でないと串焼きにして食っちまうぜ!!」

そう言って登場した若に驚き、リスの魔獣は飛び上がってその花々の上を飛び回った。

「こらこら、ジビエ料理と違うんだから…。リス美味しいけど」
「ディーヴァ貴女ったらリスも食べるの…?」
「ふふっ……美味しいよ?」

リスの肉は木の実が主食だからか、ほんのりと木の実の甘みがあり、臭みがない肉だ。
えぐみに近い奇妙な後味があるのが、気になるといえば気になる点。
食べれる物はなんでも食べる、がモットーのディーヴァ。アッ苦いものと美味しくないものは食べないけど。

「それより若があんなデケェ声だすからまた逃げただろが!追うぞ」
「てか、おっきい花がいっぱいだあ…」
「!!
ラフレシアか、まずいな…」

よく見れば花畑の中に咲いているのは、普通の花だけでなく世界一大きいというかの有名な、ラフレシアである。
ただの大きい花だと思いきや、髭が冷や汗を垂らす。その理由とは…?

「もしかして魔獣なのかしら?」
「ああ、ラフレシア…花型の魔獣だ。俺も木属性の1人だからな、偶然だが知っていた」

髭がそう言った時、リス魔獣がラフレシアの花の上に着地、次々に足蹴にしていった。
ラフレシアがゴゴゴゴとその花弁を揺らし、足代わりの根を引っこ抜いて意思を持ち動き始める。

「ほんとだ!魔獣だった!」
「こいつ…動くぞ!
ポケットに入っちゃうモンスターのラフレシアかよ」

ほんとそれな。

「って、リスの野郎、ラフレシアにちょっかい出すだけ出して逃げやがった…」
「私達に後のことは押し付けようってわけね」

追いかけっこはまだ続く。
…リス自身も足を怪我したようで、逃げるスピードが目に見えて遅くなったが。

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