スイーツまでの道のりは長い 4

今度こそ杖にまたがったリアラは、肩に髭を乗せ空中にふわりと浮かび上がる。

「いい?何かあったら、若の炎かディーヴァの魔法を空に打ち上げて知らせなさい。くれぐれも無茶はせずに。
逆に私側が何かわかったら、ディーヴァの居場所探して向かうわ」
「あいあいさー!」
「……うーん、大丈夫かしら」

どうも、ディーヴァといると、親のような気分になって調子が狂う。
へらり、笑って手を振るディーヴァには不安しかない。
が、隣にはリアラよりも前から一緒に過ごしている若というパートナーもいることだし大丈夫だろう。

ちらちらと下の2人を気にかけつつ、上空に舞い上がり、ジャングル全体を見下ろすと、リアラは肩の相棒に笑みをこぼした。

「頼りにしてるわよ、ダンテ」
「ああ、何なりと申しつけてくれよ」

一方、ディーヴァ達は。
空高く消えていくリアラ達を見送りながら、飛行に思い馳せていた。

「いーなあ…あたしも飛びたい」

そう。ディーヴァは魔女なのに未だ飛べないのである。
杖の形状として、羽の形のユニットが宙に浮いているのだが、これは完全なるただの装飾品。
かわいいでしょう?とつけただけのシロモノである。

「ダンテはひとりだったら飛べるもんね。うらやまギリィ…」

逆に若は飛べる。
およそ飛ぶのに特化していないであろう、耳の羽毛を高速で動かして飛ぶのだ。シューーーール!!

「あー、ディーヴァを乗せた状態だと長距離飛べないからな。
ごめんなぁ、せめてディーヴァがもうちょい、」
「体重減らせって!?あたしよく食べるほうだけどぜんっぜん体重増えてませんから!!」
「ちげぇわ!体重増えてねーのは、抱いてる時の感触でモロわかりだ!」
「キャッ!ダンテさんのえっち!」
「はあ……。
その魔力値の低さと安定性なんとかしろって言ってんだよ」

なんだか疲れた。
パートナー解消する気はまっっったくもってこれっっっぽっちもないが、ディーヴァと話すと疲れる時がある。

「アッそこは大魔法使いに進化するから大丈夫!」
「さいで」

ディーヴァは若の疲れを知らずに、明るく言ってのけた。
若の疲れポインツが上がった。

「…でも、あたしも早くビューン、ヒョイしたいなぁとは思うよ」
「●ィンガーディアム●ヴィオーサか?
そのうち出来るようになるだろ。仮にも魔女なんだから。ただし、あと100年後とかな!」
「くっ…他人事だと思って…!」

大魔法使いに進化できるのは当たり前だと、ダンテは思ってくれているようだ。
だが、100年後とか…!
年齢について言われると、いくつになっても女性はイライラするものである。

「いーもん、もうすぐネロが立体機動装置作ってくれるから!」
「羽根型のアレな。かなり難航してるみたいだぜ」
「んふふ…出来上がったらダンテのことこの世から駆逐してやる…」
「おーおー、やれるもんならやってみろ?
オレの事だーい好きなディーヴァが、ンなこと出来るわけがねぇ。
そもそも立体機動装置が簡単に出来上がるわけもないから、お前はこれから先も空とは無縁だっ!!」

ネロが作ってくれているという、魔女飛行の為の装置。
作るには、なかなか手に入らない特殊な鉱石が必要な上、製作にも時間がかかるようだ。出来上がりには相当な年数がかかること間違いなし。
だがネロならやってくれる!あたし信じてる!

「とりあえず大好きは言い過ぎね!」

指摘され口を尖らせたディーヴァが呟いた。

「まーたまたぁ照れちゃってかわいいなァ?」
「なんかムカつくー」

そう言って笑いながら、ひとり耳を動かして飛ぶダンテ。
すごく、腹立たしい。
「ていっ!」と杖を一振り、ダンテに光線を発射して空からハエ叩きの要領で落し、ディーヴァは満足そうに頷いた。

「いきなり落とすなよ。痛くないし別にいいけど」

その後に続くダンテを軽く無視して、ふんふんと鼻歌交じりで歩くディーヴァはお散歩気分で周りの様子をうかがっている。
様子をうかがうというより、探検してる子供にしか見えないがそれは言ってはいけない。

「両手にはおやつぅ〜、食べるのはあたしぃ〜、背中にはFlugel der Freiheit〜って感じ?
あーあ、早く大空を飛びたいよ、ほんと」

木々の間から見える大空を仰ぎ見るディーヴァは、魔女らしく空を飛ぶのが夢。
叶えてやりたいが、こればかりは本人の努力次第。
ダンテはそんなディーヴァの頭をポンと叩き、からかい交じりに先を促す。

「それ歌うなら両手にはGloria、唄うのはSieg、背中にはFlugel der Freiheitだろ。何勝手に変えてんだ」
「揚げ足取るならダンテのマフラー焼いて食べるよ」
「どこがベーコンだ、どこが!」
「そこまで言ってない。言おうとしたけど」

そんなことより早くスイーツ食べたい。
ディーヴァは本日食べるスイーツのため、目を皿のようにしてここから抜け出す為の手掛かりを探した。


…一方その頃のリアラと髭はというと。

「ジャングルエリアだからかしら、熱帯気候特有の風がほどよいあたたかさで気持ちいいわね…」
「気分は南国、か。今度セブ島でも行ってみるか。もちろん、そこではリアラはいつもの格好じゃなく、水着を着て歩くんだ。ーーイイだろ?」
「水着は恥ずかしいけど、たまには旅行に行くのもいいわね」

魔界とはいえ、常界と変わらぬ晴天の風を感じながら、空のデートと洒落込んでいた。

「ディーヴァは本当に大丈夫かしら」
「大丈夫だろ。若がついてるし、やたらと運だけはいい魔女だ。心配するなら自分の心配しろよ」
「自分の心配、ねぇ…?」

私は貴方の心配もしてるんだけどね。
出会った時からそうだが、ダンテはあまり私に心配をさせてくれない。気がつけば、心配される側になっている。…いつまでたっても勝てない、変わらない。

「ところで、心配でどうにかなるって、いったい『どう』なるのか教えてもらってもいい?」
「…意地の悪い質問だな。これは正直に詳しく耳元で、言った方がいいか?」
「貴方の方が意地悪ね。正直に詳しく耳元で、なんて恥ずかしくて私の方がどうにかなりそうよ」
「はあ、ここが杖の上で残念だ。地上なら人の姿でキスのひとつでも送れたんだがな」
「け、結構よ!」

仕返しに揶揄おうとすれば、逆に揶揄われてしまった。
今の彼が小さな魔獣姿でよかった。

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