スイーツまでの道のりは長い 3

ツルやツタが這って歩きづらい道を急ぐ4人。

「しっかし、あんな森のど真ん中に魔界と通じる『アナ』があったとはなぁ」
「普通の人間さんたちがあんまり通らない森だとは言え、いくらなんでも危険だよね。知らぬ間に魔界に入る事になるんだもん…」

立て看板でも必要かな、と続けようとした時、髭が即座に否定した。

「危険は危険だが、そうそう『アナ』は出現しないだろ。アレは一度発生し、通った者がいるのを感知すれば消える。そしてしばらくは同じ場所に発生しない」

ちなみに、発生理由は未だ解明されていないとの事。魔界には魔獣さえ知り得ない謎が多い。

「へー、そうなんだ。じゃあ、心配すべきは迷い込んだあたし達、って事かあ……………、
こわっっっ!!」
「そんなに怖がらなくてもなんとかなるわ。私は戦える魔女で普段から通ってるし。
それになんて言ってもプラチナクラスの魔獣・ダンテが2人もいるんだもの。百人力よ」

くるくるくると自分の杖をバトンのように回し、トン、と杖の端で自身の肩を叩いてみせるリアラ。
髭は、まず頷いてみせる。

「…そうだな。
………だがな、リアラ」

そして、少し厳しい顔でリアラに言葉を向けた。

「ここには毒草や危害を加えてくる植物が生えていることもある。下手に触るのは危険だ。
俺の前には出るんじゃないぜ」
「私は平気よ」

どこか不服そうなリアラが言う。
リアラの肩に手を置き、髭は言い聞かせるようにそのブルーアイを見つめた。

「たしかにディーヴァも弱くて心配だが、」
「え、あたし弱いの?」
「「「………………」」」

大事な話をしている時に空気を読まぬディーヴァ。
言葉の綾だ、気にするなの視線がディーヴァを射抜く。
沈黙を壊し、髭は続ける。

「俺はリアラの方が心配だ。
魔女として先輩だからってあまり自分を過信した行動はとるな。自分を大事にしろ。
おとなしい魔獣ばかりとはいえ、ここは魔界なんだ。俺より先に歩かれて何かあろうものなら、心配でどうにかなっちまう」
「はあ…わかったわ」

心配で憂う熱視線には耐えられそうもない。心が暖かすぎて火傷をしてしまいそう。
リアラはおとなしく頷く。

「うちのダンテも心配性なとこ結構あるけど、髭さんはすっごい心配性なんだね。ううん。過保護って言うのかな。
ちょっと羨ましいかも」
「大事なパートナーだが、俺はリアラの保護者みたいなところもあるからな。
心配するのは当たり前だ」

リアラの後頭部を抱き、自分の胸元に引き寄せてウインクする髭。
リアラはほんのり頬を赤く染めて、目を閉じされるがままその行為を甘受した。

「ディーヴァ、もしかしてオレにもこうなってほしいって?」
「別にぃ?心配しすぎてどうにかなるって状態になってほしくないだけかな」

普段べったりで仲の良いパートナーだが、基本は自由奔放な関係の若とディーヴァ。
これが『基本』のディーヴァ相手だととてつもない依存性を発揮するが、ここは魔女と魔獣の世界。
多少性質が違うようだ。

「あ、そ。
とりあえず心配しすぎでどうにかなるってのは、自慢の体毛が抜けすぎてハゲるとかだな!兄貴が心配のしすぎでハゲ散らかしたら、リ●ップ大量に贈りつけてやるよ!HAHAHA!!」
「俺の毛が抜ける前にお前の毛皮剥いでやろうか若」
「おっとそりゃ勘弁」

どんな時も軽口はやめられないとまらない。
髭相手だからまだいいが、これがバージル相手なら、売り言葉に買い言葉。
そのまま殺し合いレベルの喧嘩に発展する。
でも、それ以上言うのは本気で皮を剥がされそうなのでお口チャックするのでした。

「よし!
とりあえずここ抜けるなりなんなりしようぜ」
「動かないでいても状況は打破できないもんねぇ…」

髭にリアラをとられたため、若の腕に手を絡ませるようにくっつき、歩みを進めるディーヴァ。
パートナーはパートナー同士でくっつくのが、やはりしっくりくる。

「ええ、たぶんどこかに常界につながるゲートがあるはずだわ。そうでもないとおかしいもの」
「常界に用があっても世界線を超えられない弱い魔獣用に、各地に点々と常界への簡易的出入り口があるからな」

とはいえ、常界に用のある魔獣はそうそういないのだが。

「私とダンテは飛んで上空から探すから、ディーヴァ達は下から探して」
「はぁーい」
「下から……めんどくせぇな。いでっ」
「らじゃりました!」

杖にふわりと飛び乗り、リアラがゆっくりと浮かび上がるなか、ぼそりと呟いた若の脇腹にディーヴァの肘鉄が決まる。
それを横目に、髭はジャンプして小さな肩乗りサイズの魔獣へと変化、自身も杖に乗った。

「ちょっと待って髭さん降りて」
「「「へ?」」」

そしてその様子を見たディーヴァ。
髭をぴょんと下ろさせると。

「虎さんんん!!」

小さいもの、それももふもふしたものが好きなディーヴァ。
肩乗りサイズの小さな髭を、むぎゅうと抱きしめて高速頬擦りした。

「やれやれまたこのパターンか」
「飽きない子ねぇ」

嫉妬する気持ちはないが、髭が変身するたび毎回これだ。本人はもちろん、リアラも呆れるしかない。

「オレが獅子に変身してやるからそれでやりゃいいってのによ………」
「えへへー、だってかわいいの好きなんだもん。
まあ、ダンテがこういう風にちっちゃくなってくれるなら、いくらでもわしゃわしゃよーしよしできて満足できるんだけど?」
「お前の魔力の安定性的に無理だな」

即答され、ムッとしたディーヴァによる、髭へのさらなる頬擦り。
完全にとばっちりだ。

しばらく堪能し、リアラの元に返される頃には、髭の毛並みは乱れに乱れていた。
本人は気にしていないけれどもリアラは苦笑をこぼし、その毛を整えてやりながら喉をかいてやった。

ネコ科特有のゴロゴロという声が聞こえ、気持ちよさそうに目を細めるのを見ていると、本体は巨大な虎だということも忘れ、ほっこりしてしまう。
更に頬ずりしたくてうずうずするディーヴァであった。

「オイだからオレの身体で頬ずりしろとあれほど(ry」

[ 113/130 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -