少しオトナな休日デート 7

時間もいい頃合い。
事前に予約してあったのだろう、ダンテはマンハッタン島の一番南に位置する、とある高層ビルの上の階のバーへとリアラを連れて来た。

照明を見えるか見えないかくらいのギリギリまで落とし、摩天楼ゆえ窓からはマンハッタンの夜空より輝く夜景。
バーテンはこちらにほとんど干渉してこずに、黙々とグラスを拭いていてあまり気にならない。
お洒落で素敵なバーだった。

カラン…グラスの氷が軽やかな音を立てる。
ほぼ360度夜景が一望できる形になったそこで、ダンテとリアラは静かにしっとりとグラスを傾けた。

「美味しい…」
「ふむ。ジントニック以外もけっこうイケるもんだな」

頼んだツマミを夕食に、ダンテが飲むのは『ニューヨーク』の名をそのまま冠したカクテル。
ウイスキーをベースにグレナデンシロップやライムジュースをステアしたピンク色のさっぱり甘口の物だ。
甘口を選ぶあたりダンテらしい。

「疲れただろ、色々連れ回しちまってごめんな」
「なんで謝るんですか?すごく楽しかったですよ」

慣れぬプチ旅行に似たデート、慣れぬマンハッタン島という場所。
気疲れでもしてやしないかと、リアラを心配し謝るダンテ。
リアラはダンテの手にそっと自らの手を重ねながら、ニコと笑った。

「私、ダンテさんとまた行きたいです…公園もスケートもまだ行ったことのない場所にも」
「俺もだ。次は博物館でも行くか?1日じゃ回りきれないらしいぞ」
「はい!是非行きたいです!」

ニコニコと頬を高揚させて答えるリアラは、別に酔っているわけではない。
昼間の楽しいデートのひと時を思い出しているのだ。

そんなリアラの飲んでいるのは、ダンテがバーテンダーに「例のアレを頼む」と注文した『ブリザード』というカクテル。
度数はそこまで高くなく、アペティリフにも最適なウォッカベースの一杯でジューシーで繊細、甘みと酸味が見事に調和した物だ。
飲んだ者は「まるで口の中に雪が舞うような爽やかさを感じる」と、そう言う。

「このカクテル…リアラの技にも雪を吹雪かせる技あるし、ぴったりだと思ってな…」
「ダンテさん…」

その時のダンテは、目をあさっての方向に泳がせポリポリと頬を掻いて、少し照れているようだった。

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