少しオトナな休日デート 5

少しずつ日が沈む。
夕暮れ時になりセントラルパークを出たダンテとリアラは、マンハッタン島をタクシーを使って南下した。
目指したのはロックフェラー・センターにあるアイススケート場。

クリスマスも近いということで、そこには巨大なクリスマスツリーが設置されている。
イルミネーション輝くその真下で、2人はしばしスケートに興じた。

お互いほとんど初心者に近かったが、そこは半分悪魔のおかげかインストラクターの教えを乞わずとも、楽に滑れた。
リアラにいたっては、氷狼の血をひいているため、氷の上は独壇場といっても過言はない。

会場内に控えめに流れる音楽に合わせ、氷上の社交ダンスをクルクルと舞い踊る2人は、オリンピックのフィギュアスケート選手も顔負け滑りの腕前。
ステップを踏み、リフトをし、スピンジャンプを軽くこなす。

「楽しいか?」
「はい、とても!公園でのゴンドラも楽しかったですが、スケートも楽しいですね!」
「楽しいなら何よりだ。リアラの嬉しそうな顔を見てると、こっちまで嬉しくなるぜ…」

声を弾ませて笑顔を浮かべるリアラに、ダンテの顔もほころぶ。

リアラの履く白いスケート靴と、ダンテの履く黒いスケート靴がリンクに弧を描いてゆく。
リアラの滑る轍を辿るようにダンテが滑るさまは、恋人同士の追いかけっこのよう。

「やれやれ、リアラは滑るのが速いな」
「ふふ、ダンテさんは私を捕まえること、出来ますか?」
「…言ったな」

途端はじまる追いかけっこ。
捕まえられそうになれば手をすり抜けるリアラに苦心しながらも、ダンテは何度目かでリアラのその腕をつかんだ。

「捕まえた!」
「きゃ…」
「おっと、大丈夫か?」

掴まれたことで、ぐらりと揺らぐ体。
転ばぬようにと、もう片方の手もしっかり掴んで支える。

「大丈夫です、ありが…っ!?」

ダンテの方を見れば、そこには予想以上に至近距離な彼の姿。
心配そうにこちらを見つめてくる青い瞳にはリアラの姿が映り込み、リアラの瞳にもまた、ダンテの姿が映っていた。
2人の背景には、カメラのレンズフレアやハレーション、ゴーストのような物が漂う。

ムード満点。
今にもキスしてしまえそうな空気が漂う中、先に動いたのはダンテだった。

「キス、していいか」

ボンッ!!
その言葉の前にリアラの頭は恥ずかしさで大爆発。

「はぅっ…!こ、ここはっ…お、往来の…っ!いっぱい人がいる真ん中で……っ!だ、だめ、ごめんなさいですっっ!!」

リアラは、真っ赤な顔で取り乱しながら、やっとのことで断るのだった。

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