一緒にいるだけで溶けてしまいそう 12

「駅まで送る」
「え、そんな…大変じゃ……」
「駅までくらい送らせてくれ。一緒にいたいんだ」
「…はい。お願いします」


そう言って歩いた駅までの帰り道。
雨はしとしとと降り続き、静寂の中を雨音だけが支配する。

顔をあげれば、もうすぐ、お互いが別れてしまう駅。
またしばらく会えなくなる。
さみしい…。

近くて遠い。
携帯電話ですぐ連絡を取れるという意味では近いし、でもお互いの実際の場所を考えるととても遠い。
そういう意味もあるけれど、今現状の距離は、もっと近くて遠いものに感じる。
出来ることなら、せめて駅までくらい。

傘ごしではなく、手を繋いで歩きたい。


このまま何もなくお別れなんて…。
もうサヨナラなの?
バイバイしなくちゃいけないの?

止むことなく降り続く雨のように、ちょっと寂しく感じる。

夢の中のように、私を抱きしめて。
…なんて言いたい、けど言えない。

リアラは唇をきゅっと結んだ。



今すぐリアラを抱きしめたい。
なんて言えるはずもなく、髭は少し素っ気なく別れの言葉を口にする。

「じゃあまた」
「はい、今日はありがとうございました」
「ああ、また連絡するな……」

ちょっとさみしそうなリアラが目に止まる。
その瞬間、髭の中で何かがはじけた。


「…リアラ、」
「ダンテさん?」

気がついた時にはリアラは髭の腕の中にいた。

夢の中で体験した場景そのままで、まるで夢の中に戻ってしまったかのよう。

驚きに傘がぽとりと、落ちる。

「こ、ここ往来の真ん中ですよっ!駅の真ん前!人が見てるーっ!!」

わたわたと慌てだすリアラだが、その手が髭を突き放すことはない。
その手は髭の服を小さく掴み、嬉しさを表していた。

「気にするな。お前からは俺の腕の中の世界以外何も見えないだろ?」
「え…」

ぎゅう、さらに強く抱きしめられ、すっぽりとリアラの視界は髭の腕で覆われた。


確かに、腕の中のセカイはダンテさんのほかに何も見えないわ。
雨音さえも、聞こえない…。
聞こえるのは私と同じように早鐘を打つ、ダンテさんの心音だけ。

完全に2人だけの世界。




いつの間にか冷たく凍るような雨は上がり、暖かな光と虹が2人を照らしていた。

俺は。
私は。

あなたに恋をする。
一緒にいるだけで溶けてしまいそうなそんな恋を。



***
闇姫様のサイトで曲イメージ企画をやっていたので、リクエストして頂いてきました。
「ボカロの『メルト』で甘々夢。うちの子とおじさん、ディーヴァちゃんと若」でリクエストしたのですが、やばい甘い!いい意味でひたすら甘い!
おじさんにあんな言葉言われてみたいなあ…(*´艸`)
うちの子もディーヴァちゃんもかわいらしい服でデートしましたね!二人ともかわいかった!
『メルト』の男性ver.も 織り混ぜて頂き、ありがとうございます(*^^*)
闇姫様、ありがとうございました!

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