イチゴの日

久しぶりの『大当たり』の依頼があった。
報酬も多くてほくほくするが、それよりももっと嬉しいものをダンテは依頼主からもらってきた。

依頼主は果物の農場経営者だった。
そして、ダンテがお金よりも嬉しいもの……と、言えばもうわかるだろう。


帰ってきたダンテが抱えた大きな箱から漂っていたのは、甘酸っぱい香りだった。
ダンテは大量のイチゴをもらってきたのだ。


「すげーだろ、これ全部イチゴだぜ!」
「うわー、多いねぇ」

箱をおろしてやっとこさ、あらわになるダンテの表情は子どものようにキラキラと輝いていた。

ディーヴァは、こんなに大量のイチゴを捌くのは生まれてはじめてかもしれない、と思う。
腐る前に全部処理しきれるかどうか不安な気持ちと、たくさん料理が作れるという楽しみな気持ちがあった。
今回は僅差で楽しみな気持ちが勝った。

余談だが、ディーヴァのストレス解消法は『片っ端からお菓子を作りまくること!……食べきれるかどうかは別として』である。


「ジャムにショートケーキ、タルトにゼリー…でもでもやっぱり捨てがたい、生が一番美味しいよね!まずは生で食べて、それから何を作ろうかな〜?」

腕が鳴るね!
と、エプロンをその身にまとい、うでまくりする。

ダンテはニコニコ笑顔で追加した。

「ディーヴァ、一番大事なレパートリー言うの忘れてるだろ?」
「なんかあったっけ〜?」

同じくニコニコしながら言う。
しらばっくれているだけで、その料理名はわかっているのだ。
ダンテは口を尖らせた。

「……意地悪いうなよ」
「はいはい、ストロベリーサンデーを御所望なのはわかってますって!」

軽く洗った生のイチゴを足止めにと預け、ディーヴァはダンテの好物に取りかかった。



* * *



「オレ…生まれ変わったらイチゴになりたい」

ヘタの際まで赤く染まり、ぷっくりとしたイチゴを指でつまみ上げながらダンテが呟く。
ディーヴァにも聞こえるように言っているのか、その目線の先を辿るとディーヴァに行き着いた。

「最終的に食べられちゃうよ」
「それでもいいかもしれない…」
「ふーん、そしたらあたしが食べてあげる」

しゃかしゃか生クリームを泡立てながらサラリと返す。

あいかわらず手動は疲れる。
電動泡立て器が欲しいとは思いつつも、大好きなダンテのために愛情をこめたい!そんな思いからずっと手動である。


「ディーヴァに食われる、それもいいな」
「でもいちゃいちゃはできないね、あたしは生まれ変わっても人間がいいもん。人間と果物じゃ、恋愛は無理だよ?」

その言葉にダンテはぐすん、と涙するふりをした。

「……やっぱオレは生まれ変わってもオレのままでいたい。そんでディーヴァと会っていちゃいちゃしたい」

ディーヴァの後ろから、ぎゅうと甘えるように抱き締める。

見れば、洗ったイチゴを入れていたガラスの噐は空っぽ。
結構な量を入れたというのに、もう食べたようだ、早い!

「ストロベリーサンデー、もうちょっとで出来るよ。だから甘えんぼダンテはおとなしくしてて?」

これではホイップが出来ない。
ディーヴァはダンテに離れるようやんわりとした言葉で伝えた。

「うぅぅ〜〜〜。ストロベリーサンデーも大事だけど、オレは今すごくすごーく!ディーヴァに抱きついていたい気分なんだ!」
「じゃあ、せめて手くらいは動かせる状態にさせてよ」

さらにぎゅうぎゅうと抱き締めてくるダンテに、苦笑するしかない。
ディーヴァにべったり張り付くダンテは、全くその力を緩めなかった。



そのあとストロベリーサンデーは作れたのかって?
結局、途中になっていた材料を冷蔵庫にしまい直し、しばらく抱きつかせることになってしまった。

もちろん、最終的にディーヴァはしつこいダンテを叱ることになるのだが、今のダンテにはそれを知るよしもない。



***
闇姫様のサイトで拍手文がフリーだったので頂いてきました。
1月5日は『苺の日』ということで、苺のお菓子を作るディーヴァちゃん。作るのはもちろんダンテの好物のストサン、しかも、愛情を込めたいがために一生懸命手を動かして生クリームを作るディーヴァちゃんがかわいいです(*´艸`)
「ふーん、そしたらあたしが食べてあげる」「ディーヴァに食われる、それもいいな」…なんてイチャイチャなやり取り!うちの子とおじさんにもやらせた(略)
闇姫様、ありがとうございました!

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