我が家に来たお犬様。 2

「ただいまー」


後ろ手に鍵を閉め、靴を脱ぎ、そのまま真っ直ぐリビングへ向かい扉を開けると、


「わぁ?!ちょまっ」


凄い勢いで押し倒されました―――大型犬に。


「ただいまーダンテー」


自分の体をぐいぐいと押し付けるこの犬…ダンテ。
綺麗な銀色の毛をゆっくりと撫でれば、気持ち良さそうに目を細めた。
ダンテは、正式に私が飼った犬ではない。
所謂"捨て犬"だったのだ。
正直、成犬を引き取ろうか否か悩んだ。
ただ、ぽつんと階段の踊り場で座っていたこの犬を、放っておくことができなかった。


「ウチに来る?」


そう声をかければ、誰が見てもわかるくらいに目を輝かせ、尻尾を千切れんばかりに振って私に飛び付いてきた。
幸い、私のマンションはペット可だったので、何事もなく飼えたのだが。


「色々お金かかったんだよねぇ……」


シャンプー代、餌代、その他諸々。
多分このくらいで足りるだろうという金額を裕に越えたときは正直目を見開いた。
ペットを飼っている家庭は裕福に見えるが、やはり私の考えもあながち間違いではないことがわかった。
クゥン、とダンテが心配そうに私の顔を覗き込んできたので、その頭を優しく撫でてやる。


「大丈夫だよ、ちょっと考え事してただけ」


私は買ってきたコンビニ弁当を食べ、シャワーを浴びてテレビをつける。


「さて…今日もチャレンジするか」


目の前のゲーム機と向き合い、電源ボタンを押す。
ディスクを読み込む音が静かな部屋に響く。
胡座をかいた私の脚の上にダンテが乗っかってきた。
音が止み、テレビ画面には。

≪ディスクの読み込みに失敗しました≫

「ダメだったぁぁぁぁ…」


無情なテレビ画面の一文。
そう、何故か最近、このゲーム機の調子が悪いのだ。
しかも、読み込めないディスクは一枚だけ。


「何でこれだけ読み込めないのかなぁ…」


私の大好きなゲーム、"Devil May Cry"。
友達に薦められて買ったこのゲーム。
ストーリーも面白いし、何より主人公――ダンテがイケメンで、この子の名前もそのダンテからとったくらい。


「あああダメだダンテ不足だぁぁぁぁ」


そういうと、ダンテは心配そうに顔を覗き込んできた。


「あぁ、ダンテはダンテでも君じゃないのよ」


撫でようとすると、その手をするりとかわし、自分の鼻を私の鼻にくっつけた。
すると。

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