甘い悪戯
※魔女パロ時空
「ダンテ、面白い形のチョコレートがあったから買ってきたの、一緒に食べよう」
「面白い形のチョコ?」
「うん、ほら」
リアラが焦げ茶色の箱を開けると、仕切られた中には四角いチョコレートと一緒に肉球の形をしたチョコレートが入っていた。へえ、とダンテは興味深そうに声をあげる。
「肉球の形をしたチョコか、珍しいな」
「でしょ?薬草の配達先の魔女さんが教えてくれたチョコレート専門のお店で見つけたの。美味しいって有名なお店なんですって」
「そりゃあ楽しみだな」
笑ってそう言うと、ダンテは箱の中からチョコレートを一つ摘み上げる。
「よくできてるな」
「本物みたいだよね」
どれにしようかな、とリアラが選んでいる隣りでじっとチョコレートを見ていたダンテはあることを思いつく。
「リアラ」
「何?」
呼ばれて顔を上げたリアラは、唇に何かが触れる感触に驚く。
「!」
「ニャーン…なんてな」
悪戯っ子のような笑みを浮かべたダンテの腕がこちらに向かって伸ばされていて、チョコレートの香りが鼻に届く。チョコレートを唇に当てられたのだとわかって、リアラは顔を真っ赤に染める。
「なっ…!」
「ほら、食べろよ」
「うー…」
唸りながら、リアラは渋々口を開ける。口の中に転がされたチョコレートは噛んでいる内に溶けて、甘い香りを広げる。美味しい、のだが。
「どうしてこんな食べ方させるのよ…」
「んー、面白そうだったから」
「面白そうだった、って…」
そんな理由でやられたら、こちらは恥ずかしくてたまらない。眉をしかめるリアラに顔を近づけると、ダンテは目を細め、口元に妖しい笑みを浮かべて囁く。
「それとも…口移しで食べさせてほしかったか?」
「!?いらない、絶対いらないから!!」
「そんなに言われると傷つくなぁ」
微塵も傷ついていないくせにそう言って、ダンテは顔を離す。はー…とリアラが長いため息をついていると、なあ、とダンテが再び話しかけてくる。
「何?」
「食べさせたんだからお返ししてくれよ」
ほら、と口を開けるダンテは、先程の自分と同じように食べさせてほしい、と言っているらしい。その行動にリアラは再びため息をつく。
「お返しって、ダンテが勝手にやったんでしょ」
「そう言わずにやってくれよ、な?」
甘えるような声で頼んでくるダンテに折れて、仕方なくリアラは四角いチョコレートを一つ取り、彼の口元に運ぶ。
「はい」
「ん…うん、美味いな」
子供のような笑顔を浮かべた彼に、ようやくリアラも笑みを浮かべたのだった。
***
甘い悪戯
(どうして猫の鳴き真似までしたの?)
(猫の肉球の形してたからな、それに俺はネコ科だし)
(いや、確かにそうなんだけど…)
2019.2.14〜3.2
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