30分の邂逅 1

※DMC長編の二人と魔女パロの二人が出会ったら。ここでは魔女パロの二人も恋人設定です。主に長編のリアラ視点になります。
長いです。全4ページ。


「どうぞ」

「ありがとう、頂きます。…うん、美味しい。こっちの私はお茶を淹れるのが上手いのね」

「ありがとうございます、そう言って頂けると嬉しいです」

「そう言うお前の淹れる紅茶も美味いだろ?みんなそう言ってるし」

「ふふ、ありがとう」

自分と同じ顔をした彼女が自分がしないであろう微笑みを浮かべるのはとても不思議な感覚だ。ティーカップを乗せていたトレーを持ったまま、リアラは二人と向かい合うようにソファに座る。
彼女達がやってきたのはつい数分前。キッチンでお茶の準備をしていたリアラは、二階からした大きな物音に驚き、急いで音のした場所を見に行った。音源は自分の部屋で、扉を開けたらベッドの上に自分と同じ顔をした女性と恋人と同じ顔をした男性が座っていて、状況が飲み込めなかったリアラは扉を開けたままの体勢で固まってしまった。後から遅れてきたダンテも予想外の事態に動きを止めてしまい、あちらの二人もこちらを見て固まってしまっていた。
しばらくして我に返ったのだろう、一番最初に口を開いたのは女性で、驚かせてごめんなさい、と詫びた後、事の経緯を語ってくれた。名前は聞かずともわかったが、彼女が丁寧に自己紹介をしてくれたため、やっぱり、と確信を持てた。彼女−もう一人の自分が話してくれた内容によると、彼女達が住む世界は人間と魔女、魔獣が住む世界らしく、人間と魔女の住む常界、魔獣の住む魔界と二つの世界があるらしい。魔女である彼女と魔獣である彼は契約を結んでいるパートナー同士であると同時に恋人同士でもあるとのことで、今は一緒に暮らしているらしい。今日は彼と一緒に家のある森を散歩がてら見回っていたのだが、突如、足元にブラックホールのような物が現れてそれに吸い込まれてしまい、彼共々こちらの世界に来てしまった、ということだった。
今はとりあえず落ち着いて話をしようということでリビングに降りてきたところだった。ちなみにこちらの世界については、自分がお茶の用意をしている間にダンテが二人に説明してくれている。

「何というか…見た目が同じなのに中身が違うってのは、不思議な感覚だな。まあ、世界が違えば境遇も違うもんだが」

ダンテも自分と同じ感覚になっていたらしい、顎に手をやり、まじまじと向かいの二人を見ながら呟く。それに彼女はふふっ、と笑う。

「それは私も一緒よ、まさか違う世界にも私達がいるとは思わなかったもの」

「だよな。しかも、俺らと同じ恋人同士とはなぁ」

恋人の言葉に彼はしみじみと頷く。あの…とリアラは口を開く。

「元の世界に、帰る方法はあるんですか?」

「うーん…方法は探してみないとわからないけど、来たのが突然だから、帰るのも突然、ってことはありそうね」

思案しつつも冷静に返した彼女に、落ち着いてるなあ、とリアラは思う。自分もこれくらいの落ち着きがほしいものだ。

「ま、何とかなるだろ。それより俺はこっちの二人の話を聞きたいんだがな。滅多にないことだ、聞けることは聞いとかないとな」

「お気楽ね、ダンテは…。まあ、ダンテらしいといえばダンテらしいけど」

ため息をつきつつもそこまで止めるつもりはないようで、彼女はそれ以上は言わなかった。彼は子供のように目を輝かせ、じゃあ、とリアラに視線を向ける。

「お前に聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「私、ですか?」

リアラが首を傾げると、ああ、と彼は頷く。ダンテ、と彼女が咎めるような視線を向ける。

「彼女にだって名前があるんだから、名前を呼ばずに『お前』なんて言うのは失礼よ。私だったらいいけれど」

「わかってるよ、けど、あっちの俺がいる前であいつの恋人の名前を呼んだら、あっちの俺が気分が悪いだろ?」

予想外の返答だったのか、彼女もリアラも目を瞬かせてダンテを見る。二人からの視線を同時に受けたダンテは気まずそうに頭を掻いて頷く。

「……まあ、そっちの俺の言う通りだな」

「だろ?だから逆の場合ももちろんだめだ、俺の前であっちの俺の名前を呼ぶなよ?」

軽い口調ではあるが、恋人を見るその目は嫉妬の色が見て取れる。はぁ、とため息をついて、彼女は頷く。

「…わかったわ」

「よし、呼び方についてはこれで解決だな」

先程の表情が嘘のように満足そうな笑みを浮かべると、彼は再びリアラに視線を向ける。

「話が逸れちまったな、で、お前に聞きたいことなんだが」

「はい」

「お前もリアラと同じ、氷属性なのか?」

ああ、とリアラは納得する。全く同じ見た目なのだ、中身がどこまで一緒か気になるのだろう。

「はい、そうです。私もそちらの私と同じ氷の属性を持っています」

「やっぱりか。じゃあ、おそらく両親も同じだな?」

「そうだと思います」

「じゃあ、あなたの力は私と同じように父親から受け継いだのかしら?」

「はい」

リアラが頷くと、そうなの、と彼女も頷く。

「私は魔女だから、ダンテのように魔獣の姿になることはできないんだけれど…半魔のあなたはなれるのかしら?」

「はい、なれますよ。私は『魔獣化』って呼んでます」

リアラがそう答えると、彼女は少し考え込み、ためらいつつ言う。

「…あの、一つお願いがあるんだけど…」

「はい、なんでしょう?」

「あなたの『魔獣化』、見せてもらうことはできるかしら?」

予想外のお願いにリアラは目を瞬かせる。隣りにいた彼も目を瞬かせていたが、何か思い当たることがあったようで納得した顔を見せた。

「ええ、いいですよ」

「本当?ありがとう!」

まあ、特に隠す程のことでもないしいいかな、と思って了承すると、彼女はぱあっと目を輝かせてお礼を言う。その様子は先程の彼女の恋人のようだ。少し待っててくださいね、とリアラは言うと、ソファから立ち上がり、ダンテ達から少し距離を取る。す、と目を閉じ、魔力を高めると彼女を吹雪が覆い、次の瞬間には白い狼の姿になっていた。

「わあ…!」

更に目を輝かせ、彼女は感嘆の声を上げる。リアラが彼女の座るソファに近寄ると、彼女はじっとリアラを見つめる。

「父様にそっくり…触ってもいい?」

『いいですよ』

どうぞ、とリアラがその場にお座りの体勢を取ると、彼女はゆっくりと手を伸ばす。

「毛並みがいいのね、触っててとても気持ちがいいわ。ダンテが魔獣の姿になった時よりも少し柔らかいかしら」

こうしていると父様を思い出すわ、そう言う彼女の撫でる手つきは優しく、相手を思いやる心が伝わってくる。撫でる手の心地よさにリアラは目を細める。

「キューン…」

「ふふ、かわいいわね」

ぱたぱたと尻尾を振るリアラに彼女は笑みを深める。

(かわいい…)

(癒されるな…)

ダンテ達はというと、自分の恋人と違う世界の彼女が戯れる様子に心和ませていた。最後に頭をひと撫でしてありがとう、と彼女はお礼を言う。リアラが元の姿に戻るのを確認し、彼女はソファに座った。

「私達の希望ばかり聞いてもらって申し訳ないわ、あなた達から私達に聞きたいことはないかしら?」

リアラがソファに座るのを見計らい、彼女が尋ねてくる。リアラとダンテは顔を見合わせる。

「聞きたいこと、な…リアラは何かあるか?」

「一つあるんですけど、聞きたいことというよりはお願いで…」

そう言うリアラの視線が彼に向けられる。どう言おうか迷っているリアラの心情を察したのか、彼は自分から切り出した。

「何だ?遠慮しないで言ってみろよ」

「あ、えっと…」

彼から言われるとは思っていなかったリアラは視線をうつむかせて言うのをためらったが、その言葉に背中を押されて再び口を開く。

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