好きな色

「ダンテさん、髪はちゃんと拭かなきゃだめだって何回も言ってるじゃないですか」

バスルームから出てきたダンテを見やり、リアラはため息をつく。
上半身裸にジーンズ、肩にタオルを引っかけた姿で姿を現したダンテの髪は軽くしか拭いていないのかポタポタと雫が垂れている。風邪をひいてはいけないと思い、毎度毎度この姿を見る度にリアラは注意しているのだが、返ってくるのは生返事で、守ってくれたことなど一度もない。
読んでいた雑誌をテーブルの上に置き、リアラは隣をポンポンと叩く。

「ほら、座ってください。髪拭きますから」

「はいはい」

毎度のことなので、ダンテは大人しくソファに座る。リアラは立ち上がるとダンテの後ろに回り、彼の肩にかけてあるタオルを手にとった。

「痛くないですか?」

「ん、大丈夫だ」

彼女の優しい手つきは痛いどころか気持ちよく、思わずダンテは目を細める。
ふと、リアラが口を開いた。

「…ダンテさんの髪って、きれいですね」

「ん?そうか?」

「はい。銀色で光を反射してキラキラ輝いて…とってもきれい」

そう言い、リアラはダンテの髪を見つめて目を細める。
ダンテの髪は他にはない銀色で、動く度に光を反射してキラキラと輝く。目を引くと共に、不思議な魅力がある。

「まるで月みたい。私、ダンテさんの髪の色好きですよ」

髪を手で梳き、微笑むリアラに、ダンテは目を瞬かせる。

「月?そうか?」

「ええ」

「ふうん」

しばし考える仕草を見せた後、ダンテはリアラに尋ねた。

「リアラはどんな色が好きなんだ?」

「好きな色ですか?」

「ああ」

ダンテが頷くと、リアラはうーん、と何かを思い浮かべるような仕草を見せた後、ゆっくりと答えた。

「白が好きですね。あとは青や水色…そんなところでしょうか」

「身につけてる色そのまんまだな」

「ダンテさんも同じでしょう?好きな色は真逆ですけど」

そう言ってくすっと笑うリアラにつられ、ダンテも笑みを溢す。

「確かにな。で、何でその色が好きなんだ?」

「白は雪の色、青や水色は空や水の色、だからです。私、雪や空の色が好きなんです」

「そうか」

リアラに向かって微笑むと手を伸ばし、彼女の髪を梳きながらダンテは言った。

「お前の髪もきれいだよ。光が当たったら反射してキラキラ光って…まるで雪みたいだ」

その言葉にリアラは目を瞬かせると、微かに頬を赤らめながらお礼を言う。

「ありがとうございます」

ダンテの髪を手櫛で整え、リアラは彼の肩にタオルを戻す。

「喉が渇いたでしょう?今、飲み物持ってきますね」

「ああ」

ダンテが頷くと、リアラはぱたぱたと音を立ててキッチンに向かった。





好きな色
(あなたに言われたら、もっと好きになれる気がする)
11.2〜11.29

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