何もかもが上で 6

二人が入った店は、リアラがよく行く店だった。最近暖かい日が続き、季節も春めいてきたためか、春物の服が並んでいる。
リアラはキョロキョロと辺りを見回す。心なしか目がキラキラと輝いているように見える。


(ああ、やっぱりこいつも女なんだな)


その様子にダンテは苦笑すると、優しくリアラを促す。


「ほら、どれが見たいんだ?」


話しかけられ、ようやくダンテの方を見たリアラは「あそこが見たいです」と指を指して答える。
ダンテはリアラの指指した場所まで彼女を連れて行くと、「ゆっくり見ていいぞ」と彼女に言う。
それに頷くと、リアラは服に目をやり、めぼしい物を探し始めた。
その様子を後ろから見守っていたダンテは軽く辺りを見回す。
こういう店はいつもの自分なら浮いてしまう場所だが、今の女の姿なら自然と馴染んでいるのか、他の客から変な視線を向けられることもない。
今の自分とリアラを見た者はどう思うのだろうか。歳の離れた仲のよい姉妹にでも見えるのだろうか。
自分の考えに思わず苦笑したダンテは、ある場所で目を留めた。
そこは、髪飾りやアクセサリーが並べられた小物のコーナー。かわいいのからおしゃれな物まで、様々な小物が揃っている。


「……」


しばらく考えにふけっていたダンテは、リアラの呼ぶ声で現実に引き戻された。


「ダンテさん?」

「ん?ああ、どうした?」

「この服試着してみたいので、待っててもらってもいいですか?」

「ああ、行ってこい」


ダンテが頷くと、リアラは礼を述べて試着室へと向かう。
その後ろ姿を見送ると、ダンテは迷わず小物のコーナーに向かった。ざっとコーナーを見回し、目についた物を手に取る。
素早くレジに向かい会計を済ませると、ちょうどリアラが試着室から出てきた。


「お待たせしました」

「ああ。それ買うのか?」

「はい」

「そうか。じゃあここで待ってる」


頷くと、リアラは服を持ってレジへと向かう。それを見送りながら、ダンテは先ほど買った物を素早くポケットに入れた。

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