何もかもが上で 5
スラム街にほど近い店が建ち並ぶ通りは、平日のためか人がまばらだ。
ゆっくりと通りを歩きながら、リアラは呟く。
「静かですね…」
「まあ、平日だしな。祝日に比べたら静かだろ」
そう答えたダンテを、リアラは横からちらりと見る。
普段ショートパンツが多いリアラが唯一持っていたジーンズに、自分の黒いシャツに紺の七分丈のVネックのカーディガン。上着は、元々体格のいいダンテが着ていた服を女になった身体で着るのだから、見てもわかるくらいにぶかぶかだ。
けれど、それが妙によく似合うものだから、正直見惚れるしかない。
「どうした?」
かなり凝視していたのだろう、ダンテが苦笑しながらこちらに話しかけてきた。
はっと我に返り、リアラは戸惑いながらも素直に思ったことを口にする。
「その…似合うな、と思って」
その言葉にダンテは目を見開いたが、すぐにふっと笑って、「ありがとな」と言ってリアラの頭を撫でる。
「お前も似合ってるぜ、その服」
ダンテは微笑みながら言う。
リアラは毛糸の青い半袖のハイネックにモノクロチェックのスカート、上着に灰色のジャケットを羽織っていた。
リアラは目を瞬かせると、微かに頬を染め、「ありがとうございます…」と返す。
リアラの頭をもう一撫でし、ダンテは問いかける。
「どこから回りたい?」
リアラは少し悩んだ後、ぽつりと答えた。
「…服見に行きたいです」
「了解」
優しく笑って、ダンテはリアラの手を取って店に向かった。
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