何もかもが上で 4
「何だ、俺に見惚れたか?」
「あ、いえ、その…」
うろたえ、視線をさ迷わせたリアラは、ソファの軋んだ音に気づき、顔を上げる。
それと同時にリアラに影がかかり、リアラが座っているソファの背もたれにダンテの手が置かれた。
ニヤニヤと楽しそうに笑いながら、ダンテは口を開く。
「なあ、今の俺をどう思う?」
「どう思う、って…」
リアラは言葉に詰まる。
息がかかりそうなくらい近くにお互いの顔があって、心臓の音がうるさいくらいに耳に響いている。
今の状況でも十分恥ずかしいのに、ダンテはどんどんと距離を縮めてくる。
「なあ、教えてくれ」
「…っ」
ダンテが片足をソファに乗せる。ギシリ、とソファが軋み、二人の身体が密着する。リアラの胸にダンテの胸が当たり、お互いを軽く押し潰す。
びくり、とリアラが肩を跳ねさせる。
「あ、う…」
最早言葉も発せず、リアラは途切れ途切れに声を溢す。目は潤み、泣く一歩手前だ。
(…少しやりすぎたか)
リアラの様子を見てダンテは心の中で呟くと、ゆっくりと身体を離した。
「ごめんな、少しやりすぎた」
そう言い、ダンテが優しく頭を撫でると、リアラは「うー…」と小さく呻き、ぼろぼろと涙を溢し始めた。
溢れて止まらない涙を指で優しく拭いながら、ダンテは困ったように苦笑する。
「本当にごめん。だから、泣かないでくれ」
謝罪の意味を込めてダンテがリアラの額にキスすると、それに驚いたのか、リアラが目を丸くしてこちらを見てきた。
涙はぴたりと止まり、瑠璃色の目が瞬きを繰り返す。
それにくすりと笑みを溢し、ダンテは立ち上がって言った。
「泣かせたお詫びだ。出かけるか」
「え?」
「どうせこの姿だと仕事なんてできないからな。気晴らしに外に出るぞ」
ほら、と手を差し出されて、リアラはおずおずと手を重ねる。
いつもより一回りも二回りも小さいが、いつもと同じ温かさを持つ手に、リアラはようやくふわりと笑みを浮かべた。
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