何もかもが上で 3
「…で、そうなったと?」
「ああ」
あの後、ダンテは何とかリアラを落ち着かせ、ぎこちない朝食を済ませてから、こうなったであろう理由を話した。
話を聞いている内に落ち着いてきたのか、リアラは静かに話を聞いている。
話を聞き終え、リアラは思わずため息をついた。
「何てはた迷惑な悪魔…」
今までのダンテの話をまとめると、昨夜依頼で狩る標的だった悪魔は淫魔的なものだったらしく、女を犯して楽しむ自分からしたら最低な奴だったらしい。
それほど強いわけでもなかったので、ダンテは大した時間もかからずにその悪魔を狩ったのだが、その悪魔が死ぬ前に「非力な姿にしてやる」と言い放って、ダンテに呪いをかけた。
その時は異常はなかったため、ダンテはその場を後にして依頼主から依頼料をもらって事務所に戻ってきたわけだが、帰る途中に異様な眠気に襲われてしまい、事務所に着くなり自室に直行して寝てしまったというわけだ。
そして、今に至る。
(異常な眠気って、呪いに対する拒否反応か抵抗だったのかしら…)
今さら考えてもしょうがないことを考えながら、リアラは口を開いた。
「…で、いつ戻れるんですか?」
リアラが尋ねると、ダンテは肩を竦めてみせる。
「さあな。まあ、そんなに強い悪魔じゃなかったし、2、3日もすれば元に戻るだろ」
ダンテの言葉に、リアラは彼をじっと見る。
確かに、ダンテの身体にその悪魔のであろう魔力はまとわりついているが、それほど強いものではない。2、3日もしたら消えてしまうだろう。
「…確かに、2、3日もしたら戻れそうですね」
「だろ?」
いつもの感覚ってやつか?と聞かれ、ええ、まあ、とリアラは答える。
(それにしても…)
リアラはダンテをじっと見る。
向かい側のソファに優雅に足を組みながらカフェオレを飲んでいるダンテは、まるで元から女性だったとでもいうように仕草に違和感がない。
(自分の姿見た時も「…何だ、これ?」の一言で終わりだし…余裕ありすぎじゃない?)
自分だったら間違いなくパニックに陥るだろう出来事を、平然と受けとめてしまうダンテ。
ハンターとはこれくらいの余裕を持たなければいけないのだろうか。いや、何十年もこの仕事を生業としてきた彼だからこそ持つ余裕なのか。
リアラがそんなことをぐるぐると考えていると、ふいにくす、と笑い声が聞こえた。
リアラがはっと我に返ると、ダンテがこちらを見て笑みを浮かべていた。
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