2様編 3
「わあ…」
ダンテに手をひかれ、自室から出てきた雪菜は居間のテーブルに並べられた食事に感嘆の声を漏らす。
テーブルには向かい合わせに二人分の食器が置いてあり、白い皿の上にはミートソーススパゲッティがきれいに盛りつけられている。その他にもサラダとスープが側に並べられていて、ちょっとしたレストランのようだった。
雪菜はダンテの方を振り返る。
「これ、本当に全部ダンテが作ったの?」
「ああ」
「すごいね、こんなに料理できたんだ!」
得意なの?と雪菜が聞くと、長年一人暮らしだったから、それなりにはやれる、とダンテは答えた。
「ほら、冷める前に食べよう」
「あ、そうだね」
ダンテの言葉に頷き、雪菜はテーブルの前に座る。向かい側にダンテも座った。
「いただきます」
「いただきます」
お決まりのあいさつを述べ、二人は食事を始めた。
雪菜はパスタを一口分フォークに巻き取り、ぱくりと口に含む。
「おいしい!」
「そうか。よかった」
雪菜が声を上げると、ダンテが安心したように微笑む。心なしか白い耳が嬉しそうにピコピコ動いているように見えて、雪菜は笑みを浮かべる。
「ねえ、ダンテ」
「何だ?」
「何で今日は、こんなことしてくれたの?」
食べながら雪菜は聞く。どうして、今日に限ってこんなことをしてくれたのだろう。
すると、ダンテは優しい笑みを浮かべて言った。
「いつも世話になってばかりだからな。何かで礼をしようと思って」
「お礼…?」
「ああ」
ダンテは頷く。そして、ようやく雪菜は気づいた。
「だから、今日、料理作ってくれたの…?」
「ああ。少しだけ寝るつもりが、かなりの時間寝てしまったからな。もうお前が夕飯作ってるんじゃないかと思って少し焦った」
そう言い、苦笑するダンテに雪菜は嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう、ダンテ…」
「いや…こっちこそ、いつもありがとう」
お互いにくすくすと笑いあうと、雪菜は言った。
「ねえダンテ、明日お休みだから、一緒にお菓子作ろう」
「菓子、か?」
「うん。ダンテと一緒に作りたい」
「…そうか」
優しく頷くダンテに、雪菜は尋ねる。
「ダンテ、何食べたい?」
「ストロベリーサンデー」
「ふふ、やっぱりそれなんだね」
楽しそうに笑うと、雪菜は頷いた。
「わかった。じゃあ明日、材料買いに行こ」
「ああ」
二人で交わした小さな約束に心はずませながら、雪菜は食事を続けた。
***
2013.4.4
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