おじさん編 1

夕食を終え、居間で雑誌を読みながら、雪菜はゆったりとくつろいでいる。
くつろいでいる、はずなのだが。


「……」


雑誌から目を離し、雪菜は後ろを見やる。
雪菜のすぐ後ろにはダンテがいて、自分を抱き締めたままテレビを見ている。彼の手は自分の腰に回され、ぎゅうっと強く抱きしめてくるものだから、二人の身体は密着している。背中に彼の体温を感じて心地よいといえば心地よいのだが。


(何で今日はこんなにスキンシップが多いんだろ…)


ダンテが自分に対して何かしらのスキンシップをするのはいつものことだが、今日はやたらと多い。雪菜は首を傾げる。


(何か特別な日でもないし…なんだろ?)


しばらく考えてはみたものの、特に何も思いつかない。本人に聞いた方が早いかなと思い、雪菜は口を開いた。


「ねえ、ダンテ」

「んー?」

「今日って、何か特別な日だったっけ?」


雪菜の問いに、ようやくテレビから視線を外したダンテはこちらを見る。


「いいや、何もないぞ」


どうした?と問い返され、雪菜は先ほどから思っていたことを口にする。


「今日は、やたらとスキンシップが多いから…」


何かあった?と続けると、ああ、と納得したように頷き、ダンテは答えた。


「いつもの礼」

「はい?」

「いつも世話になってる礼」


笑いながらダンテは言うが、雪菜の頭の中は疑問だらけだ。
いつもお世話になってるお礼をしたいのはわかった。だけど、このスキンシップがお礼なのか。彼がこうしたいだけではないか。
よほど疑わしそうな顔をしていたのだろう、ダンテがくすりと笑って雪菜の眉間に人差し指を当てた。


「そんな顔するなよ。かわいい顔が台無しだぞ」

「余計なお世話よ」


ぷいっと雪菜が顔を逸らすと、クク、とダンテが喉を鳴らして笑う。
ふいに、ダンテの視線が雪菜の手元の雑誌に移る。彼女が読んでいたのはファッションの雑誌で、開かれているページは
様々なヘアスタイルが載っている。


「……」


突然黙ってしまったダンテを不思議に思い、雪菜は呼びかける。

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