‐『番犬』編‐ 9

「悪い、ちょっとした悪戯のつもりだったんだが…」

「……」


リアラは黙ったまま俯いている。
ダンテはリアラの正面に回ると、彼女の頭に手を置き、優しく撫でる。


「…本当にごめんな」


あと、とダンテは続ける。


「…いつもありがとうな。お前のおかげで安心して眠れる」

「!」


その言葉に、リアラが勢いよく顔を上げる。いつもの大人っぽい少し細めの目が見開かれて、じっとこちらを見る。
リアラが来る前は、いつ悪魔が来ても迎え討てるようにと、屋敷の住人皆が枕の下に銃を隠したり、ベッドの側に剣を置いたりして常に気を張ることを強いられる夜を過ごしていた。
それが、リアラがここに来て、「私が『番犬』として悪魔を狩ります」と言ってからは、悪魔が来る夜は屋敷の前に待機し、悪魔を狩ってくれている。そのおかげで、親父が結界を張っていれば、俺達はゆっくりと眠れるようになった。未だに、寝る時に武器を近くに置いておく癖は抜けないけれど。


「…じゃあ、俺は部屋に戻るな」


お前も早く休めよ、と言い、ダンテは踵を返したが、少しの間を置いて、身体が後ろに引っ張られた。不思議に思ってダンテが後ろを振り返ると、リアラがダンテの服の裾を掴んでいた。自分のしたことに気づき、リアラははっと我に返る。


「あ、あの、その…」


うろたえたように視線をさ迷わせ、やっとのことでリアラは言う。


「…に入ったら…」

「ん?」

「服、洗濯して、お風呂に入ったら…。お茶を一緒に飲むくらい、なら…」


ダンテ様の服も汚れてますし、と言うリアラの言葉に、ダンテは自分の服を見る。悪魔の体液で汚れた服を着た彼女を抱きしめたためか、自分の服も少し汚れていた。
くすりと笑い、ダンテはリアラに向き直ると、再び彼女の頭を撫でた。


「お前の部屋でもいいのか?」


冗談で言ったつもりだったのだが、リアラはこくりと頷く。


「…若を起こさなかったら…」


予想外の言葉にダンテは目を見開いたが、すぐに嬉しそうな顔をすると、ひょいっとリアラを抱きかかえた。


「ひゃっ!?ダ、ダンテ様!?」

「部屋まで連れて行ってやるよ」


驚き、顔を真っ赤にするリアラを他所に、ダンテは上機嫌で屋敷へと歩を進める。
―今度からは、菓子でも用意してやるか。
いつもがんばってくれている、彼女のために。そんなことを考え、ダンテは笑みを溢した。
―その後、結局リアラの部屋で二人一緒に寝ることになるのはまた別のお話。



***
2013.3.27

[ 26/80 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -