‐『番犬』編‐ 8
「あいかわらず仕事が早いな」
頭上から降ってきた声に驚き、リアラは上を見上げる。
リアラの見上げた先には、木の上に登り、笑みを浮かべながらこちらを見るダンテの姿があった。
「ダンテ様…」
「今日、夕食の後から姿を見てなかったから、もしかしてと思ってな」
木から降り、こちらへ近寄って来るダンテに、リアラは尋ねる。
「…いつから見ていらっしゃったんですか?」
「リアラが木から降りた辺りだな」
ということは、ほぼ最初から見ていたことになる。
(それにしても…)
全然気づかなかった。気配に敏感な自分でも気づくことができないとは。
でも、とリアラは思う。
(この人、過去にも何度かこういうことしてるのよね…)
そう、これが初めてではない。過去にも自分がこの仕事をしている時にどこからかこっそりと見ていて、 今日のようにすぐ話しかけてくることもあれば、次の日に突然言われることもある。
そう思いつつ、リアラは口を開く。
「お眠りにならなくてよろしいのですか?」
もう夜も遅いですよ、とリアラが言うと、ダンテは参った、とでも言うかのように両手を挙げる。
「まだ眠くないんでな」
けれど、とダンテは続ける。
「お前が一緒に寝てくれるなら、眠れるかもな」
ニヤリと笑ったダンテの言葉に、リアラは目を見開く。
「遠慮させていただきます。明日も仕事なので」
それでも何とか平静を装い、失礼します、と返すとリアラは屋敷に向かって歩き出した。だが。
「待てよ」
「!」
背後からダンテに捕まり、リアラは足を止めてしまう。ダンテはリアラの腰に手を回し、逃げられないようにしっかりと抱きしめる。
「は、離してください!」
「やだね」
いいって言うまでは離さない、と言い、ダンテは片手を下へと下ろす。
「ひゃ!?」
「あいかわらずきれいな足してるな」
ダンテはスカートへ手を伸ばし、中へ手を入れると、リアラの脚を触りながら、腕をそのままスカートごと上へと上げていく。スカートが上がっていくにつれ、徐々に黒いストッキングに包まれたすらりとした脚が露になり、リアラは首を振る。
「あ、嫌…っ!」
「大人しく一緒に寝てくれたら止めるぞ?」
太股の辺りで手を止め、ダンテが囁く。
リアラはパニックに陥り、何も考えられなくなってしまう。ふるふるとリアラの肩が震え出したのを見て、ダンテは焦る。
(やばい、このままだと泣く!)
リアラは極度のパニックに陥ると泣いてしまう癖がある。慌ててダンテは手を離した。
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