‐『番犬』編‐ 5
屋敷に帰ると、初代が二人を出迎えた。
「お帰りなさいませ、ネロ様」
「ああ」
初代の言葉に頷き、ネロはリアラに再び礼を述べると、自室へと戻っていく。ネロの後ろ姿を見送ってから、初代はリアラに話しかける。
「キリエ嬢へのお返しは決まったのか?」
「はい。私のお勧めした髪留めをお返しにするそうです」
リアラが答えると、初代は目を細めて、そうか、と優しく返す。
一度深呼吸をすると、リアラは口を開いた。
「…初代さん」
「…何だ?」
空気が変化したのを察し、真剣な面持ちで初代が尋ねる。
「…旦那様に、今夜は結界の力を強めるように、と」
リアラの言葉の意味を理解し、初代は声を低くして返す。
「…わかった。ということは、今夜はあの仕事をするんだな」
「はい」
リアラは頷く。
「夜のためにもう休むか?」
「どちらでも構いません。忙しいのであれば、仕事をしてから休みます」
そうリアラが答えると、初代は顎に手を当てて思案する。
「そうか…。なら、夕食までは仕事をしてくれるか?片付けは俺と若でやるから、お前は早めに上がれ」
「わかりました。ありがとうございます」
初代の心遣いに感謝を述べると、仕事着に着替えるためにリアラは自室へと急いだ。
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