‐『番犬』編‐ 4

「だいぶ遅くなっちゃったわね」

「悪い、長い時間つき合わせて」

「ううん、久しぶりにああいうの見れて楽しかったよ。むしろ、ケーキまで奢ってもらってごめんね」


大したことしてないのに、とリアラが言うと、そんなことはない、とネロは首を振る。


「すごく助かった。うちの屋敷は男ばっかだから、こういう相談ができるのってリアラだけだし」

「そっか。ならよかった」


リアラがにこりと笑うと、つられてネロも笑う。
キリエへのお返しを買ったあの後、ネロがお礼に、と喫茶店でケーキを奢ってくれた。そこは静かな落ち着いたお店で、ネロによると、前にここを歩いていた時に見つけたらしい。「リアラ、こういうところ好きかと思って」というネロの心遣いがとても嬉しかった。お店の雰囲気もいいし、ケーキもおいしく、リアラのお気に入りの場所の一つになった。


「さて、じゃあ帰ろっか」

「ああ」


屋敷に帰ったら仕事しなきゃ、と呟き、リアラは歩き出そうとした。
だが。


(―!)


ふいに何かを感じ取り、リアラは足を止め、空を見上げる。
赤く染まった空。だが、いつもと違う空。まるで、血を溢したかのような。


(嫌な予感がする…)


魔狼の血ゆえか、人より鋭い感覚が訴える。今夜は―


「…リアラ?」

「!ごめん、今行く!」


先を行くネロの呼びかけに我に返り、リアラは歩き出す。屋敷への道を辿りながら、リアラは微かな声で呟く。


「帰ったら、初代さんに言わなきゃ…」


今夜は、忙しくなりそうだ。

[ 21/80 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -