‐『番犬』編‐ 1
麗らかな天気の中、リアラは庭で洗濯物を干していた。一般の家庭よりも遥かに大きい物干し竿に洗われたシーツがはためき、白く輝く。
最後の一枚を干し、パンッ、と軽く音を立てて皺を直すと、リアラは頷いた。
「うん、これでよし!」
籠の中に干し忘れがないか確認して持つと、リアラは空を見上げた。
「いい天気」
見上げた視線の先には青空が広がっている。心が洗われるようだ。
だが、やらなければいけないことがたくさんある。ここで立ち止まってはいられない。
(もうすぐでお昼になるから、昼食の準備をしなきゃいけないわね)
空から視線を戻し、次の仕事のことを考えながらリアラが歩き始めた時だった。
「リアラ!」
名を呼ばれたリアラは声のした方に顔を向けると、こちらに向かってくる人物の名を呟いた。
「ネロ様?」
リアラの名を呼んだのはこの屋敷の住人であり、三兄弟の末っ子のネロだった。
ネロはリアラの前に来ると足を止め、しばし呼吸を整える。
「どうしたんですか?」
わざわざ自分を探すなんて何かあったのだろうかと思い、リアラが尋ねると、
「ちょっと、リアラに用事があって」
とネロは答えた。
リアラは首を傾げる。
「私にですか?」
「ああ。リアラ、午後忙しいか?」
ネロに尋ねられ、リアラは頬に手を添えて思案する。
「午後、ですか?いつも通りだと思うので、特に忙しくはないと思いますが…」
午後の予定は昼の休憩時に初代が伝えるため、今の時点ではわからないが、特に何も言われていないため、いつも通りの仕事をすることになるだろう。
リアラがそう答えると、ネロはほっとした顔をした。
「そうか。もし大丈夫なら、リアラに頼みがあるんだけど」
「頼み、ですか?」
リアラが尋ね返すと、ネロは頷く。
「実は…」
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