‐一日編‐ 12
チャプ…
「ふぅ…」
息をつき、リアラはお湯の中に身体を沈める。
時刻は午後10時。仕事を終え、夕食を食べたリアラは一日の疲れをとるために風呂に入っていた。
お茶の時間を終えた後、特に急ぎの仕事のなかったリアラはダンテの外出の伴をした。外出中、いつものようにダンテはちょっかいをだしてきたが、今日は不思議と気にならなかった。お茶の時間にいろいろと褒められたからかもしれない。
今日のことを思い返しながら、リアラが思わず笑みを浮かべた時だった。
ガラッ
突然、風呂場の扉が開く。リアラはそちらの方へと目をやり、驚きに目を見開くと、思わず口を開いた。
「わ、若!?」
リアラの視線の先にいたのはタオルを腰に巻いた姿をした若だった。若はリアラに気づくとパッと顔を明るくし、
「リアラ!」
と言って驚きに固まっているリアラに近寄って来た。
「お風呂入ってたんだ」
にこにこと笑いながらそう言う若に、リアラは困惑を隠し切れない。
「な、何で若がこの時間に…。いつもは入るの遅いのに…」
リアラの言う通り、普段なら若は仕事が終わった後は夕食を食べ、部屋でいくらか寛いでから風呂に入るため、いつも遅い時間に入っているのだ。
リアラの問いに、若はああ、と納得すると、
「今日は早くお風呂に入りたくなってさ、ここに来たらリアラがいたんだ」
と答えた。
最早何も言えなくなってしまったリアラを置いて、若は身体を洗うために一旦その場を離れた。
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