‐一日編‐ 11
「凝ってるな」
盛り付けとか、皿とか、とダンテが続けて言うと、リアラは首を傾げる。
「そうですか?いつも通りですけど…」
無意識なのだろう、少し口調がくだけている。かわいいな、とリアラには気づかれないようにくすりと笑みを漏らし、ダンテは話を続ける。
「皿がいつもと違うせいだろうな。何だか違って見えた」
その言葉にああ…、と納得し、リアラは答える。
「たまには紅でもいいかと思って…」
デザートの色と合いそうでしたし、とリアラは続ける。
確かに彼女の言う通り、紅地に金の縁取りが入った皿は存在感がありながらも派手すぎず、デザートの色が映える。
「よくこんなやつ見つけたな」
感心したようにダンテが言う。
「食器の棚にあったのを見つけたんです。以前から使ってみたいと思っていて」
ちょうどいい機会でした、と言ってリアラは微笑む。
この屋敷の主人はあまり物に執着がないが、気に入った物を集める趣味がある。それは食器だったり家具だったりとどの物とは決まっていない。ただ、集めると言っても飾るだけはせずに実際に使うため、実用性のある物しか集めない。そこが他の金持ちとは違うところだろうか。
今話題にあがっているこの皿も、主人の趣味で集められた一つである。
「いいチョイスだな」
「ありがとうございます」
褒められたことが素直に嬉しく、リアラは笑顔で答える。今、この時間くらいはちょっかいを出さないでおくか、と思い、ダンテは再びデザートに視線を戻す。
「じゃあ、紅茶が冷めない内にいただくか」
「はい、どうぞ」
お茶を楽しむこの時間、二人の間には穏やかな空気が流れていた。
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