‐一日編‐ 10

午後3時。リアラはカートを押しながら廊下を歩いていた。
時間的にお茶の時間。わかりやすく言うなら、おやつの時間だ。そのため、リアラはデザートの乗ったカートを押しながら各部屋を回っている。とはいえ、末っ子のネロは学校、次男のバージルは「本を読みに行く」と言って図書館へ出かけたため、今屋敷にいる住人は主人と長男の二人だけなのだが。
すでに主人へは運び終えている。あとは長男だけなのだが…。


(また何かされそうね…)


長男の部屋に向かいながら、リアラはため息をつく。
長男は仕事中にも関わらず何かとちょっかいを出してくるため、リアラはいつも何かされるんではないかとヒヤヒヤしている。
そんなことを考えているうちに長男の部屋へと着いた。リアラは一度深呼吸をし気持ちを落ち着けると、目の前の扉をノックする。


「ダンテ様、リアラです。お茶をお持ちしました」

「ああ、入っていいぞ」


部屋の主の返事を聞いてから、リアラは扉を開ける。
至るところが赤で飾られており、派手に映る部屋の中で、ダンテは赤いベッドに寝転がっていた。リアラを見留めるや否や、ダンテはベッドから起き上がり、こちらへ近寄って来た。


「今日のデザートは何だ?」

「苺のムースです」

「いいな、うまそうだ」


そう言い、一人がけのソファに座るダンテの前にある小さなテーブルにリアラはデザートを置く。そして、一緒に持って来たティーポットを持ち、カップに静かに注ぐと、紅茶のいい香りが漂い始める。紅茶を注ぎ終えると、リアラはデザートの乗った皿の傍に静かにカップを置いた。
リアラの動作を眺めていたダンテはデザートに視線を移し、呟いた。

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