‐一日編‐ 8
朝食が終わり、学校に向かうネロを見送った後、リアラは屋敷の廊下を掃除していた。
「はぁ…」
モップを動かしながら、リアラはため息をつく。
今日の朝食でハラハラしたせいで、かなり疲れてしまった。毎日ああいうやりとりがあるわけではないが、あの二人が話し出すと、いつもピリピリとした空気になる。朝から気疲れはしたくないのだが。ただでさえ、朝食が終わった後の屋敷の掃除で体力を使うというのに。
一般的に言う金持ちの屋敷よりは小さいであろう屋敷だが、廊下はそれなりに広い。五、六人なら横一列に並んで歩けるほどだ。その廊下を自分一人で掃除するのだから、終わる頃には一日の半分が終わる。
そんなことをつらつらと考えて、ふいに、リアラは「あ」と声を上げる。
(そういえば、若、皿洗い終わったかな)
いつもならば朝食が済んだ後、自分が皿洗いをするのだが、若が「リアラに迷惑かけてばっかりだから、俺がやる」と言い出したのだ。そういうのなら、と若に皿洗いを任せてこうして掃除をしているわけだが…。
(不安だなあ…)
リアラはうーん、と唸る。
若は一生懸命でがんばり屋さんではあるのだが、おっちょこちょいで、毎日と言っていいほど何かしら失敗している。
今日も何か起こりそうな気がする、とリアラが思った、次の瞬間。
ガシャーン!
遠くから皿の割れる音がし、リアラはため息をつく。
(やっぱり…)
心の中でそう呟きながら、リアラはついさっきまで使っていたモップとバケツを持って調理場へと向かった。
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