‐一日編‐ 6

リアラが広間に着くと、すでに屋敷の住人達が揃って席に着いていた。ちらり、と辺りを見回すと、若は壁際で静かに待機している。それを確認してから、リアラは住人達に向かって丁寧に頭を下げた。


「お待たせ致しました、今から食事の配膳をいたします」


そう告げると、リアラは一旦手を離していたカートに手をかけ、若に手伝いを頼んでから、食事の配膳を始めた。
一般の家より遥かに大きい(それでも他の屋敷に比べれば小さいだろう)テーブルを、リアラが右側、若が左側に回り込みながら食事の配膳をしていく。
二人が料理を並べていると、リアラの担当する側にいた壮年の男性が口を開いた。


「今日もおいしそうだ」


そう言い笑った男性は、この屋敷の主人で、リアラ達を雇っている本人である。
リアラは笑顔で答える。


「それは、作った本人に言ってあげてください。喜びますよ」


リアラの言葉に主人は「そうだな」と同じく笑顔で答える。
そこに、主人の隣りに座っていた主人より少し若い、髭を生やした男性が話に入ってきた。


「リアラは作ってないのか?」

「調理はしましたが、私はベーコンを焼いただけですから…」

「かわいいお嬢さんが焼いたってだけでもうまくなるもんさ」


まるで女性を口説くかのように言い、ウィンクをした男性に、リアラは思わず呆れの表情を浮かべる。
この男性は、この屋敷に住む住人の一人で三兄弟の長男―ダンテである。リアラ達が仕える内の一人でもあるが、自分が気に入った者を満足するまで構いたくなる性格らしく、特に気に入られているリアラがよくちょっかいを出され、セクハラまがいのことをされるため、リアラは彼を少し苦手としていた。
そんな二人を見ていた主人の向かいに座る若い男性が口を開いた。

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