幼なじみ振り向かせ大作戦! 1
澄んだ青空の下、事務所『DevilMayCry』で一人の女性の声が響いた。
「また気づいてもらえなかったー!」
何でー!?とテーブルに突っ伏すアリスに、向かいのソファに座っていたトリッシュは出されたアイスティーを飲みながら言う。
「またなの?」
「そう、また!」
ガバリと起き上がり、アリスは説明する。
「今日は髪型少し変えたのに、ダンテぜんっぜん気づいてくれなくて!仕方ないから自分から言ったら、こっちも見ずに『いいんじゃねえか?』だって!全然気持ち込もってないし!」
こんなに色々やってるのにー!と叫ぶアリスに、あらあら、とトリッシュは同情する。
「まあ、ダンテは細かいことを気にしないタイプだけど…毎回色々とやってたら気づきそうなものなのにね」
「でしょ!なのに一回も気づいてくれたことないの!」
もうどうしよー!、と頭を抱えるアリスを見ながら、トリッシュは思案する。
(もう一ヶ月も前からやってるから、気づいてるはずだけど…何かあるのかしら?)
付き合っているわけではないとはいえ、一緒に暮らしているのだから、さすがに気づくはずだが。
ふいに、アリスが大人しくなった。
「アリス?」
「私、妹としか見られてないのかな…」
俯き、アリスは続ける。
「小さい頃から一緒にいて、遊んで…。その頃から妹みたいに扱われてて、ずっとそのまんま…。10年以上も『妹』として見られてたら、変えられないのかな」
じわ…と涙で視界が滲む。泣かないようにと必死に耐えているアリスの頭を、トリッシュが優しく撫でる。
「そんなことないわ。きっと、変えられるわよ」
「うん…」
アリスが頷いた時、事務所の扉が音を立てて開いた。
「I'm home.…どうした?アリス」
入ってきたのはダンテだった。アリスの様子がおかしいことに気づき、ソファへと近寄ってくる。
アリスは慌てて袖で涙を拭う。
「な、何でもない。ちょっと目にごみが入っちゃって…」
「?ならいいけど…」
首を傾げるダンテにおかえり、と言い、アリスは立ち上がる。
「依頼で疲れたでしょ。お風呂入る?」
「ああ」
「じゃあ、タオルとか用意しとくね」
「ああ、サンキュ」
微笑み、アリスは洗面所へ向かう。ダンテもそれに続く。
二人の後ろ姿を見ながら、トリッシュはこっそりとため息をついた。
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