Animal Knight 12

「リアラ、遅いなあ…」


鍋をぐるぐるとかき回しながら、ディーヴァは呟く。
現在、夜の8時。いつもならもう帰ってきて夕食の準備を手伝ってくれるはずのリアラが、まだ帰ってこない。彼女の仕事は夕方の6時に終わりで、ここから30分ほどしかかからないところにあるから、例え少し遅くなったとしても、7時過ぎには帰ってこれるはずなのに。


「もうすぐでご飯できちゃうよ…」


ディーヴァはため息をつく。
すでにメインのミートソースのパスタや付け合わせのサラダはできていて、あとは今作っているコンソメスープだけだ。


(何か、あったのかな…)


何だか不安になって、ディーヴァは掌をぎゅっと握りしめる。
ディーヴァの足元で、いつの間にか来ていた若が心配そうにクゥン…と鳴いた。
若に気づき、ディーヴァは笑う。


「大丈夫、心配しないで」


その場に屈み込むと、ディーヴァは若の頭を撫でる。
一方、リビングにいた髭は険しい顔をしていた。


(何だ…?何か、嫌な予感がする…)


夕方辺りから感じ始めた不安。なかなか消えないそれは、胸をもやもやとさせる。
自分の動物としての勘が、何かを告げているような気がして。
ふいに、愛しい者の後ろ姿が頭を掠めた。


(!?…リアラ…!?)


髭は目を見開く。
まさか、この不安の原因は…。
いてもたってもいられなくなった髭は、風を入れるために開けていた窓へ向かって駆け出した。


「ダンテさん!?」

「ワウッ!?(おっさん!?)」


気づいて驚く二人の声を背に、窓から外へ出た髭はベランダから高く飛び上がった。

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