命の砂時計 13

『余所見をしている場合か!』

「お、っと」


悪魔の攻撃を紙一重でかわしたダンテは、悪魔の胸元に赤い石が嵌めてあるのに気づいた。魔力はそこに集中しているようだ。


「なるほどな。なら…」


大きく跳躍して悪魔から距離を取ると、銃をホルスターに納め、背に担いでいた大剣―リベリオンを構える。


「来いよ、石像もどき」

『嘗めるな、小僧!』


いらだち、悪魔はダンテに向かって突進する。悪魔に向かってダンテも突進し、悪魔の懐に潜り込んだ。


「くらいやがれ!」


同時に悪魔の胸元の石に向かって、ダンテは突きを繰り出した。突きの速さと悪魔の突進のスピードが合わさり、破壊力が増す。
悪魔の胸元の石が音を立てて砕け散る。


『グァァァ!!!』


叫び声を上げ、悪魔はダンテから距離を取る。ダンテの予想通り、胸元の石が魔力の源だったのか、悪魔に先程の勢いはない。
ダンテは悪魔に向かってリベリオンを突きつける。


「今なら見逃してやる。さっさと名前にかけた呪いを解け」

『ほざけ!』


唸り声を上げ、悪魔は再びダンテに向かって突進する。今度は動かず、ダンテはその場でリベリオンを構える。


「…なら、さっさと死にな」


そう言うと同時に、ダンテは突きを繰り出す。リベリオンが悪魔の顔に突き刺さった。


『ギャアアア!!!』


耳をつんざく悲鳴を上げると、悪魔は砂になって消えていった。
リベリオンを背に担ぐと、ダンテは名前に歩み寄った。


「ダ、ンテ…」


名前が呟くと、ダンテはその場に膝をつき、名前をぎゅっと抱きしめた。


「っ…」

「馬鹿かお前…!死ぬ気だったのか…!?」


そう言うダンテの声は苦しそうで、名前は俯く。


「ごめん、なさい…。けど、あの悪魔が…」

「俺を探してたから、か?」

「っ、」


ダンテの言葉に、名前は言葉に詰まる。


「馬鹿、俺のことなんかより、自分のことを心配しろよ…」

「だって…んんっ!?」


なおも言葉を続けようとした名前は、ダンテに顎を持ち上げられ、彼の唇によって口を塞がれた。
突然のことに、名前はダンテの背を叩いて暴れる。


「んんっ、んぅ!」

「…ん…」

「んん…ふぅ…」


息苦しさに叩く力も失せ、名前が顔を歪めると、やっとダンテの顔が離れた。
名前は必死で息を整える。


「は…っ、ダンテ、何で…」

「…俺だって…」

「…え?」


名前は顔を上げる。
ダンテは名前を見つめ、言う。


「俺だって…ずっと前から、お前のことが好きだった」

「…!」


名前は目を見開く。


「銀髪ってだけで他の奴等は俺達を怖がって近寄りすらしないのに、お前は怖がりもせずに近寄ってきて…。いつも俺達の後についてきて、一緒に遊んでたよな」


正直、嬉しかった、とダンテは呟く。


「お前の笑顔見れるのが嬉しくて、俺に笑いかけてくれるのが嬉しくて…いつの間にか、好きになってた」

「……」

「あそこを離れてからも、時々お前のこと思い出してた。だから、久しぶりにお前と会った時は驚いた。事務所に連れてって、話聞いて…。あの時、思った。『絶対、守ってやる』って」

「ダンテ…」

「…でも、俺じゃ守れない。俺は、いつも悪魔に命を狙われてる。逆に、お前を危険にさらすだけだ。お前が呪いをかけられた原因だって、俺にある」


掌を握りしめ、ダンテは呟く。

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