命の砂時計 3

「離して!離してったら!」

「大人しくしろっつってんだろ!」


建物に挟まれた細い路地で、一人の女が三人の男に絡まれていた。身体が不自由なためか、女は車椅子に乗っており、狭い路地では上手く動けないようだった。


「このアマ…!これならどうだ!」

「きゃっ!?」


喚き続ける女にしびれを切らし、横にいた男が思いっきり車椅子を押した。車体が傾き、女の身体が地面に投げ出される。
一つに結われた女の長い髪を掴み上げ無理矢理起き上がらせると、男は楽しそうに口元を歪める。


「俺等と遊ぼうぜ?なあ?」

「…っっ!」


恐怖に声が出ず、強く目を瞑った、その時だった。


「その女から手離せ」

「あぁ?」


ふいに響いた声に、男達はそちらを振り返る。つられて女も男達の見た方へと視線を向けると、そこには銀髪の赤いコートの男がいた。
呆れたように男は言う。


「教わらなかったか?女には優しくしろ、ってよ」

「うるせえ!お前等、やっちまえ!」


いらだったように真ん中にいた男が言い放つと、両側にいた男達がナイフ片手に銀髪の男に向かって踊りかかる。しかし、銀髪の男は右手で男のナイフを持った腕を掴むと、左足でもう一人の男の顔を蹴り飛ばした。


「が…っ!」


蹴り飛ばされた男が女の近くにいた男の足元に倒れる。次いでもう一人の男も殴り飛ばされ、先に倒れた男の上に重なるように倒れた。
ひっ、と短い悲鳴を上げて、男が後ずさる。


「お、お前、まさか便利屋の…!」

「知ってんなら話は早いな」


ブーツの音を響かせ歩み寄ると、銀髪の男は男に銃を突きつけた。


「さっさと失せな」

「ひいぃっ!」


悲鳴を上げると、男は仲間を残し、逃げてしまった。
銃を背中のホルスターに納め、銀髪の男は女の方を振り返る。


「大丈夫か?」

「は、はい」


男は屈むと、ゆっくりと女を抱き起こす。


「ここらへんはあんた一人じゃ危ないぜ。ましてや、足が不自由ならな」


ああいう奴等に捕まる、と続けた男は、女が自分を見つめていることに気づいて首を傾げる。


「どうかしたか?」

「……ダン、テ…?」

「!」


男―ダンテは自分の名前を呼ばれ、目を見開く。


「…どうして、俺の名前を知ってる?」

「覚えてない?私、昔、一緒に遊んでた名前だよ」

「名前…?」


女に名乗られ、ダンテは女をじっと見つめる。
自分と同じアイスブルーの瞳、腰まで伸びた淡い黄色の髪。まるで海の砂のような色の髪に、ダンテは懐かしい感覚を覚える。
ふいに、ある少女の姿が女と重なった。


「お前…昔よく俺達と遊んでた、あの名前か?」

「うん!」


女―名前が嬉しそうに頷く。
戸惑ったようにダンテが尋ねる。

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