happy summer! 3
「あ゛ー、あっちー」
姿を現したのは若だ。ドタドタと大きな音を立てながら二階から下りてくると、ネロとリアラのいるソファに近寄ってきた。
ネロは顔をしかめる。
「遅えよ。もう昼だぞ」
「いつものことだろ」
「まあ、いつもよりは早い方だよね」
「だろ?まあ、暑くて目が覚めただけだけどよ」
そう言うと、若はリアラの隣りに座る。寝ていた時の格好のままなのか、上半身裸の若にリアラの顔が赤くなる。
「若、せめてシャツ着てよ…」
「何だよ、照れてんのか?かわいいなリアラは」
リアラの反応に若は楽しそうに笑うと、彼女の後ろの背もたれに手を回す。
若がこの姿でいるのはこれが初めてではない。むしろ数えきれないくらい見ているから半ば諦めの気持ちはあるのだが、何度見ても慣れることはなく、見る度に指摘してしまう。とはいえ、他のダンテも風呂上がりや寝る時は上半身裸なので、若だけというわけではないのだが。
「あっちーな、どうにかなんねえのかよ」
「だったら、クーラーやら扇風機やら涼しくなるもの買ってこいよ。買える金があるならな」
ネロの嫌味の籠った言葉に、若はう゛、と言葉に詰まる。
この事務所に髭とリアラの二人だけで住んでいた時から生活するだけでいっぱいいっぱいだったのに、修行のためにネロが来て、何の縁か過去と未来から跳ばされて双子と初代と二代目がやって来て、現在では七人という大所帯になっている今、クーラーやら扇風機やらを買うお金は事務所にはない。
ふいに思いついたように若が言う。
「なら、リアラの力で氷でも作ればいいんじゃねえの?そうしたら涼しくなるだろ?」
「無理、体力に余裕あったらやれるけど、今やったら倒れる」
若の提案に、リアラは首を振る。
自分は属性が氷結のため、氷を操ることができる。氷を生み出すことは造作もないため、必要だと思ったらやっていたのだが、暑さも増してきた中、体力もないままやれば倒れることは確実だ。
「というか、リアラにそういうことやらせんなよ。見るからにぐったりしてんじゃねえか」
「ワリィ…」
「ううん、大丈夫」
リアラはふるふると首を振る。
すると、何かに気づいたのか、突然若がリアラを抱き寄せた。リアラは思わず悲鳴を上げる。
「ひゃっ!」
「やっぱりな、ちょっと火照ってるけど、冷たくて気持ちいい」
氷を操る魔狼の血をひくためか、リアラは他の人より少し体温が低い。
そのため、彼女の身体に触れると少しひんやりとしており、こういう暑い日には心地好さを感じるため、しょっちゅう若と髭がリアラに近寄ってくるのだ。
すりすりと甘えるように擦り寄ってくる若に、だんだんとリアラの顔の赤みが増していく。
リアラを哀れに感じ、ネロがたしなめようとしたその時だった。
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