愛でるなら優しい花を 12

「…う…」

「?誰かいる…?」


その声に気づいたのはリアラだった。リアラの呟きに紅葉が足を止めて辺りを見回すと、離れたところに建物の壁に寄りかかる老婆を見つけた。すぐ様紅葉は荷物を置き、老婆の元に駆け寄る。


「どうしたんですか、大丈夫ですか?」

「ああ、すまないね…大丈夫だよ…」


大丈夫だと言うものの、老婆の声は弱々しく、苦しそうに息を吐く。リアラも自分の荷物をケルベロスに頼み、紅葉同様駆け寄ろうとしたが、突如感じた胸騒ぎに出かかった足を止めた。


(何…?この嫌な胸騒ぎは…)

「はあ…はあ…」

「何か病気なのかな…おばあさん、今、病院に連れて…」

「……が欲しい…」

「え?何か欲しいんですか?私が持ってる物で手助けできるなら言ってください」

「そうかい、それは助かるよ。それなら…」


老婆がニタリと嗤う。その瞬間に感じた気配に、リアラは紅葉に向かって叫んだ。


「紅葉、離れて!」

「え?」

「…あんたのその若い生気を、貰おうかね」


リアラの言葉の意味を理解する間もなく、走り寄る彼女に視線を向けていた紅葉は自分の腕に絡みつく何かに気づき、振り返る。先程まで普通の人間だった老婆の顔は、緑色の皮膚をした異形の顔に変わっていた。


「…っ…!」

『旨そうな娘だ、お前のその若い生気、貰うぞ…』

「いっ、嫌…っ!」


恐怖に喉が引きつって上手く声が出せない。異形の者から伸びる無数の蔦が自分の腕を絡め取り、逃げたくても逃げ出せない。ガパリと異形の者が口を開け、紅葉に喰らい付こうとした、次の瞬間。

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