愛でるなら優しい花を 9

二人が来たのは大通りにある小さな雑貨屋。この通りは普段の買い物でよく訪れていて、その時に見つけた店だ。リアラも紅葉も気になっていて、二人で意見が合ったために一番最初にやってきた。


「わ、かわいい物がたくさんあるね!」

「本当だね」


性格や好きな物の違いこそあれ、二人共女の子。同じように目を輝かせ、二人は店の中を見て回る。


「あ、このレースがリボンになってるヘアゴム、紅葉に似合いそう」

「わ、かわいいね!買おうかなあ…あ、あの白いシュシュ、リアラに似合いそう!」

「どれ?…あ、かわいいね」

「でしょ?リアラの髪色に合うと思う!」


お互いに似合いそうな物を見つけ、それを教えては笑顔で言葉を交わす。買うとしても、買わないとしても、こういった話をするだけで楽しくて仕方がない。
少し紅葉と離れ、ぬいぐるみの並ぶ棚の前を通ったリアラは、ふと一つのぬいぐるみに目を留めて足を止める。


「…あ」


手を伸ばしてそのぬいぐるみを手に取る。ふわふわとした白いうさぎのぬいぐるみで、手足は木製のボタンで留められている。赤いボタンが目になっていて、何となく紅葉みたいだなあ、とリアラは思った。


「何見てるの?」


話かけられて隣りを見ると、紅葉がいた。紅葉は自分の手元にあったぬいぐるみを見て、あ、うさぎのぬいぐるみ、と笑顔を見せる。


「かわいいね。白い毛に赤い目って、私達がイメージするうさぎみたい」

「そうなの?」

「うん、日本だとうさぎって聞くとこんな感じのうさぎをイメージするんだよ。今は少し違うかもしれないけど」

「そうなんだ…」


紅葉の言葉に、リアラは手元のうさぎのぬいぐるみをじっと見つめる。そういう話を聞くと、益々紅葉のようだと思う。


「気に入ったの?」

「あ、えっと…何だかね、このうさぎのぬいぐるみが紅葉みたいだなあって思ったの」

「私?」


こてりと首を傾げる紅葉にリアラはうん、と頷く。


「何となく、なんだけどね。紅葉の名前には赤に関する文字が入っているでしょう?この子も赤い目をしてるから、そう思ったのかも」


以前、紅葉が自分の名前に関して話してくれた時、赤色に関係する文字が入っているのだと教えてくれた。だから、そう思ったのかもしれない。理由を聞いた紅葉は再びうさぎのぬいぐるみを見つめる。


「……」

「紅葉?」

「私みたい、かあ…そっかあ…」


少し間を置いて呟いたその声音は嬉しそうで、頬は薄っすらと赤く染まっている。


「なんか、些細なことでもそうやって自分のことを考えてもらえるのって嬉しいね」


えへへ、と紅葉は照れくさそうに笑う。リアラは少し驚いたような顔をしたが、やがて目を細めて優しく笑った。


「これ、紅葉に買ってあげるね」

「え、いいよ、そんな…!」

「いいの、私が紅葉にあげたいの」


どんな些細なことでも大切な友達が笑ってくれるなら、それは嬉しいことだと思う。リアラの言葉に、紅葉は湧き上がる嬉しさを噛みしめるようにうん!と大きく頷く。


「ありがとう!大切にするね!」

「うん」


仲よく並び、二人はレジに向かった。

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