愛でるなら優しい花を 8
暖かな陽射しが注ぐ下、三人で話をしながら歩く。ケルベロスは忠犬のようにリアラの横にぴったりとついて歩く。
道の分かれ目に来たところで、おっさまが足を止めて振り返る。
「俺の行き先はこっちだから見送りはここまでだ。いい機会だから目一杯楽しんでこいよ」
「はい!」
「はい。ありがとうございます、ダンテさん。気をつけて行ってきてくださいね」
「ああ」
自分を気遣う言葉に優しい笑みを返し、おっさまはリアラの頭を撫でる。
「ケルベロス、リアラと紅葉のこと頼んだぞ」
『言われずともわかっている』
フン、と鼻を鳴らして応えるケルベロスはそんなことは重々承知している、と言いたげな顔だ。苦笑しつつ、おっさまは依頼先に向かうために歩き出す。
「じゃあ、行ってくるな」
「はい、行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい!」
こちらに向かって軽く手を振るおっさまに手を振り返し、二人は彼を見送る。その後ろ姿が角を曲がって見えなくなったところで、二人も反対側の道を歩き出す。
紅葉はリアラの顔を覗き込む。
「やっぱり、おっさまはリアラのこと大切なんだね」
「え…い、いきなりどうしたの?」
「何ていうか、優しい目をしてるな、って思って。それに、リアラといる時が一番幸せそうだから」
最初に二人が恋人同士だと知った時はとても驚いたが、事務所に暮らし始めて二人を見ていてわかった。お互いを、とても大切に、大事に思っていることを。たまに悪戯をしたりはするがリアラに接する時のおっさまはどこか雰囲気が柔らかくて優しいし、おっさまと一緒にいる時のリアラは柔らかな表情をしていて、それでいてどこか嬉しそうだ。
「二人を見てるとお互いを大事にしている感じが伝わってきていいなあ、って思うよ。私も好きな人ができたら二人みたいになりたいな」
「…あり、がとう…」
憧れのように話す紅葉にリアラは頬を染めて小さな声で返す。その様子にふふっと紅葉は笑う。
「まずはどこから行こうか?」
「ん、と…普段はあまり見ない雑貨屋さんから行こうか」
「うん!」
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