愛でるなら優しい花を 7
リビングで2代目達と話をしていた紅葉は、トン、トン、と階段を下りる音に気づき、そちらを見やる。
「あ、リアラ!」
「おまたせ」
こちらに向かって手を振るリアラの頭にはカチューシャのように三つ編みが編み込まれていて、自分が見せた雑誌に載っていたモデルと同じ髪型になっていた。かけ足で近寄り、間近で彼女の髪型を見て紅葉は満足そうに頷く。
「うん、かわいい!リアラ、こういう髪型も似合うね!あ、いつもの髪留め、ネックレスにしたんだ」
「うん、髪にはつけなくても、肌身離さず持ちたいから」
頷くリアラの首元には、細い白銀の鎖に通された半透明の乳白色のリングが二つ。亡き母からもらった物だと言っていたから、とても大切な物なのだろう。
「お、かわいいお嬢さん達がおそろいだな」
その言葉と共に、ポン、と大きな手が二人の頭に乗せられる。二人が顔を上げると、そこには笑顔でこちらを見るおっさまがいた。
「ダンテさん!」
「あ、おっさま。そろそろ依頼に行くんですか?」
「ああ、今から行けばちょうどいい時間だからな。二人は今から出かけるのか?」
「はい、リアラが誘ってくれたので!」
「そうか、よかったな。楽しんでこいよ」
優しい顔で頭を撫でるおっさまに笑顔ではい!と答える紅葉と頬を染めながらはい…と答えるリアラ。性格の違いでここまで反応が変わるんだな…と若は思い、2代目は二人の反応が微笑ましいのか、優しい目で見守る。
「準備もできたし行こう、リアラ!」
「うん。あ、ちょっと待って、ケルも連れていかないと」
思い出したようにリアラは言う。
事務所に紅葉が来た時、悪魔と戦う術のない彼女が悪魔に襲われる可能性も考えてみんなで話し合った結果、彼女が出かける時は必ず事務所にいる誰かがついていくことになった。大抵紅葉が出かけるのは夕食の材料を買いに行く時だから、同じく家事を担当しているリアラがついていくことが多い。その時は護衛として、またリアラの武器として、ケルベロスもついていくことになっているのだ。
リアラに呼び止められ、そのことを思い出して紅葉は足を止める。
「あ、そっか」
「ケル、紅葉と出かけるから一緒についてきてくれるかな?」
『承知した』
二人の様子を見ていたケルベロスは主人の言葉に頷き、ソファから降りてリアラの足元にやってくる。周りから見ても違和感がないようにと自身の魔力で氷の首輪を白い首輪とリードに変える。ケルベロス自ら咥えて渡してきたリードを受け取り、ありがとう、とリアラはケルベロスの頭を撫でる。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
「じゃあ、見送りがてら俺も途中まで一緒に行くかな」
三人と一匹はぞろぞろと連れ立って玄関に向かう。扉の前に立つと、紅葉とリアラは若と2代目の方を振り返る。
「若、2代目、行ってきます!」
「行ってきます」
「おー」
「気をつけて行ってこい」
ひらひらと手を振る二人に手を振り返し、紅葉とリアラは玄関の扉を開けた。
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