愛でるなら優しい花を 6

「はい、できたよ」

「うわぁ…かわいい…!ありがとう、リアラ!」

「ふふ、どういたしまして」


鏡に映るいつもと少し違う自分の姿に紅葉は目を輝かせ、そんな彼女の様子にリアラは満足気な顔をする。
昼食を済ませ、依頼に行く初代を見送ってから、二人は出かける準備を始めた。お互いに服を着替え終えたところで、リアラは紅葉を鏡台の前に座らせ、彼女の髪を結い始めた。出かけると決まった時、リアラが紅葉に提案したのは、紅葉の髪をいつもと違う髪型に結う、というものだった。紅葉はその提案を喜んで受け入れ、二人の部屋にある雑誌をリビングに持ってきて、二人で相談して決めたのだ。そうしてリアラが結ったのが、緩く解した三つ編みというわけで。


「じゃあ、そろそろ行こうか」


そう言って鞄を取りに行こうとしたリアラに紅葉が首を傾げて尋ねる。


「リアラは髪、結わないの?」

「え?」

「せっかく出かけるんだし、リアラも髪型変えようよ!」

「でも、今からやってたら時間が…」

「大丈夫だよ、私、待ってるし!少しくらい時間がかかっても気にしないよ!」

「でも、私、紅葉みたいに髪が長くないから、変えるって言っても…」

「あ、そっか。うーん…あ!」


何かを思いついたらしく、紅葉は鏡台に置いていた雑誌の表紙を開く。パラパラとページを捲ると、あるページで手を止めた。


「リアラ、これ!」

「?」


紅葉が指差したページを覗き込むと、そこは三つ編みをカチューシャのように編み込んだ髪型を紹介しているページだった。自分と同じくらいの髪の長さのモデルの写真もある。


「リアラと髪型の相談してる時に見つけて、この髪型かわいいなって思ってたんだ!せっかくリアラが三つ編みにしてくれたから、二人でお揃いにしたいの!」


だめかな?と聞かれて断る理由はない。それに、いつもと違うお出かけなのだから、いつもと違った感じにしたいという彼女の気持ちはよくわかるから。苦笑して、リアラは頷く。


「わかった。じゃあ、お揃いにしよう」

「!やったあ!」


ありがとう、リアラ!そう言って座っているのに跳ねそうな勢いで喜ぶ彼女は、笑顔だけでもいろんな表情を見せる。私も紅葉みたいに表情が豊かだったらなあ、とリアラは思った。


「五分くらいもらってもいいかな?なるべく早く終わらせるから」

「ゆっくりで大丈夫だよ!私、下で待ってるね!」

「うん」


自分の鞄を持ち、こちらに手を振って部屋を出ていく紅葉に小さく手を振り返し、リアラは鏡台の前に座ると髪に指を通した。

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