愛でるなら優しい花を 4
おっさまにちょっかいを出されつつも、みんなが揃う頃にはちゃんと人数分のミルクティーもテーブルに並んだ。食べる準備ができたところで、みんなで食事前の挨拶を口にする。
「いただきます」
きちんと挨拶をして、食事を開始する。個別に蜂蜜と苺ジャムを用意したというのに、食べ始めて五分もしない内にダンテ達は自分の分の苺ジャムを食べてしまい、テーブルの真ん中に置かれた予備のジャムが入った瓶が彼らの間で回される。
「もう少し追加するか」
「あ、次俺にくれ」
「俺も」
「俺も食う!」
瓶の中のジャムが凄まじい勢いで減っていくのを見て、紅葉は驚いたような、呆れたような声で呟く。
「予備のジャムなのに、もうあんなに…」
「ダンテさん達、甘いものが好きだからね。それに私達よりパンケーキの枚数も多いし」
苦笑しながら返し、リアラはパンケーキを口にする。少しずつつけて食べているからか、彼女の分の苺ジャムはまだ半分程しか減っていない。
「リアラも苺好きでしょ?いいの?」
「うん、私はあまり朝から甘いものはたべないし。それに、ダンテさん達が美味しそうに食べてくれるのが嬉しいから」
だからいいの、そう言って笑うリアラにそっか、と紅葉も微笑む。そんな二人の前にずいっと皿が差し出される。
「おかわり」
「もう食べちゃったの?早いなあ…」
「私が持ってくるよ、リアラは座ってて!」
少し呆れぎみのリアラに対し、紅葉は笑顔で若から皿を受け取ってキッチンへと向かう。その姿を見送り、リアラはダンテ達に話しかける。
「ダンテさん達の今日の予定は?」
「俺は午後から依頼だ」
「あ、俺も依頼。昼過ぎに行く」
「俺は得に何もない。今日は一日中事務所にいる」
「俺も特に何もなし」
「ダンテさんと初代は依頼、2代目と若は事務所にいるんですね、わかりました」
「リアラと紅葉はどうするんだ?」
「私達ですか?いつも通り午後には晩ご飯の買い物に行きますけど…」
首を傾げて答えると、少しの間おっさまは何かを考えるように顎に手をやり、言った。
「たまには二人で出かけてきたらどうだ?」
「え?」
「お、いいじゃん。たまにはそういうのも必要だよな」
その言葉に乗ったのはおっさまの隣りの席にいた初代だ。若と2代目も同じ考えなのか、それぞれに同意の言葉を口にする。
「まあいいんじゃねえの?ここだけじゃあんまり楽しみねえしな」
「リアラと紅葉はいつも事務所や俺達のことばかりしているからな。たまには息抜きも必要だろう」
「そういうことだ。後で嬢ちゃんを誘ってみたらどうだ?」
「あ、はい…」
背を押されるような形になり、戸惑いながら、リアラはぎこちなく頷いたのだった。
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