愛でるなら優しい花を 2

カーテンの隙間から朝の陽射しが入り、ベッドの上に一筋の道を作る。チチチ、と小鳥の囀る声に名前はゆっくりと目を開ける。


「ん…」


目を瞬かせて窓の外の明るさに目をやると、むくりと起き上がる。背筋を伸ばして眠気を払うと、部屋の床に足をつける。立ち上がった際に微かに床の軋む音がしたのか、ベッドの側で丸くなって眠っていた黒い犬の耳がピクリと動き、うっすらと目を開けた。


『…もう朝か』

「おはよう、ケル。起こしちゃったみたいね、ごめんね」

『気にしなくていい。相変わらず主は朝が早いな』

「もう習慣になってるからね。もう少しで紅葉が起きてくると思うから、よろしくね」

『ああ』


向かいのベッドで寝ている女の子のことを頼み、ケルベロスの頭を一撫ですると、リアラは静かに部屋を出た。
洗面所で顔を洗い、髪を梳かしてシュシュで一つにまとめる。身支度を整えると、キッチンへと向かう。冷蔵庫を開け、中にある食材を確認する。


「卵とソーセージか…卵はオムレツにして、ソーセージは焼こうかな。レタスとトマトがあるからサラダを作って…」


頭の中で献立を組み立てると、材料をテーブルに置いて今度は調理台の上の棚を開ける。


「昨日はワッフルだったから…今日はパンケーキにしようかな」


小麦粉の袋を取り出しテーブルに置いたリアラは壁に掛けている自分のエプロンを取る。エプロンをつけて腰の紐を結んだところで、入口から紅葉がぴょこんと顔を出した。


「おはよう、リアラ」

「おはよう、紅葉」


いつものように朝の挨拶を交わすと、紅葉はキッチンに入る。自分のエプロンを取り、紐を結びながら紅葉は尋ねる。


「今日は何を作るの?」

「オムレツと焼いたソーセージとサラダと…あとはパンケーキかな」

「美味しそうだね!私、何をすればいいかな?」

「じゃあ、パンケーキを作ってもらってもいいかな?材料はテーブルに出してあるから」

「うん、わかった!多めに作った方がいいよね?」

「そうだね、特に若はたくさん食べるから。あ、紅葉、飲み物はミルクティーにするつもりなんだけど、いいかな?」

「ミルクティー!私、ミルクティー大好き!ぜひお願いします!」

「ふふ、わかった。ダンテさん達もミルクティーで大丈夫かな?」

「みんな甘い物好きだから、大丈夫だと思うよ」

「そうだね、じゃあそうしよっか」


紅葉の言葉に頷き、リアラは水の入ったケトルを火にかけた。

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