本当に大事なもの 6
「はい、終わったよ」
「…ああ」
確かめるように腕を動かすバージルを横目に、名前は包帯やガーゼを救急箱に仕舞う。
家に着いて、血を洗い流すために風呂に入るという彼を慌てて止めた。半魔とはいえ、長時間の戦いで疲労している彼の傷はまだ完全には治っていない。怪我が治っていないのに風呂に入ったら傷口にしみてしまう。問題ないという彼を半ば勢いで説き伏せ、タオルで拭くことで了承してもらった。彼は渋々、といった感じだったが。固く絞ったタオルで彼の身体についた血を拭った後、名前はまだ治っていない傷が服に当たってしまわないよう、手当てを申し出た。こちらも半ば無理矢理だったが、何か言いたそうにした彼も先程のやり取りで諦めたのか、大人しく受け入れてくれた。今はその手当てが終わったところで。
名前はポツリと呟く。
「…ごめんなさい」
「…何がだ」
「私がもっと早くに帰ってれば、悪魔に襲われずに済んだし、バージルも怪我することなかったのに…」
ギュッ、と服の裾を握りしめ、名前は俯く。その声は震えていた。しばし無言で目の前の彼女を見つめた後、バージルは静かに口を開く。
「…起こってしまったことは仕方がない。悪魔が現れたなら退治するのが俺の仕事だ、お前のせいではない」
「…」
「…それに、悪魔の気配を感じた時、同時にお前の気配も感じて急いで向かったのは事実だ」
「…え?」
その言葉に名前は顔を上げる。
「お前が悪魔に襲われるんじゃないかと思ったら、居ても立っても居られなかった。早く行かないと、とそう思っていた」
「……」
「…俺は、ダンテのように気持ちを素直に口にしない。だから、思っていることが伝わり辛いのもわかっている。…だが、お前を大切に思っているのは本当だ」
「バージル…」
言葉少ない彼が告げてくれた気持ちに、名前は嬉しさで胸が一杯になる。名前はバージルをゆっくりと抱きしめる。
「!」
「大好きだよ、バージル」
「…ああ、俺もだ」
抱きしめ返してくれる腕に、名前は幸せを噛み締めたのだった。
***
『Fantastic Life』のゆいにゃん様と相互リンクさせて頂き、記念に書いた小説です。
リクエスト内容は、『夢主ちゃんが強い悪魔に連れ去られてしまって、バージルが助けに行くけど悪魔が強すぎてバージルがボロボロになっちゃう、でも何とか倒して、その後夢主ちゃんが看病する』でした。
バージルお相手は初書きだったので、すごく悩みました(^ ^;)口調は何となくイメージしてたんですけど、戦闘シーンで技の出し方に悩んだので攻略サイトで技調べたりしてました。最後は看病…になっているのでしょうか?甘くしたいなーと思ったのであんな感じで締めさせて頂きましたが、微糖ですね(笑)
あ、連れ去られてない…すいません、入れ忘れてました!大丈夫かしら…(^ ^;)
ゆいにゃん様、これからよろしくお願いします!
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[mokuji]
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