本当に大事なもの 4
ガキィン!
甲高い音が響く。思わず顔を上げると、青いコートが目に入った。見慣れたその姿に名前は目の前の人物の名前を呼ぶ。
「バージル!」
「悪魔の気配を感じたから来てみれば…何をしているんだ、お前は」
早く帰ってこいと言っただろう、と呆れたように言いながら、バージルは閻魔刀で受け止めていた悪魔の角を跳ね返す。後ろに飛び退いた悪魔は邪魔をされたことに苛立っているのか、ブルル…と鼻息荒く、蹄を打ち鳴らす。
「下がっていろ、近くにいたら戦いの邪魔になる」
「う、うん」
名前は頷き、建物の影に隠れる。それを確認すると、バージルは閻魔刀を構え、地を蹴る。
「俺の物に手を出そうとはいい度胸だ」
目を細めると、伸びてきた悪魔の角を避け、バージルは閻魔刀を振り上げる。狙い通りに悪魔の身体を真っ二つに切り裂いたが、その感触にバージルは違和感を覚える。
(切った手ごたえがない…実体ではないな)
身体を切り裂かれた悪魔は痛みを感じていないのかニタリと笑みを浮かべる。次の瞬間、別れた身体が悪魔と同じ形を成し、悪魔の隣りに立った。見れば、元の悪魔も身体が元通りになっている。
(影でできた身体か…厄介だな)
それに加えて斬る度に数が増えるとなると、迂闊に攻撃することができない。対処できなくはないが、これ以上数が増えてしまうと離れた名前に被害が及んでしまう。ならば、狙うところはただ一点。
「その頭の石を破壊してやろう」
瞬時に悪魔の力の元を見つけたバージルは自分に向かって突進してきた影を避け、本体の頭に付いている黄色い石を狙う。振り下ろした閻魔刀が石に当たろうかという、その時。
バチッ
「!」
電気が走るような音がし、閻魔刀が跳ね返される。結界だ。予想外の出来事に驚くバージルの隙をつき、悪魔は角を伸ばす。
「−っ!」
「バージル!!」
二本の角がバージルの両脇腹を抉り、それを遠くから見ていた名前が悲鳴を上げる。そのまま出てきかねない彼女をバージルは強い口調で止める。
「来るな!!」
「−っ!」
びくりと肩を震わせ、名前は出かけていた足を止める。悪魔から距離を取り、バージルは立ち上がる。
「この程度、どうという傷でもない。お前は大人しくそこにいろ」
「バージル…」
今すぐにでも彼の元に駆け寄りたいが、自分では悪魔相手にどうすることもできない。名前は胸元をギュッと握りしめる。
(これは長くなりそうだな…)
早く終わらせてしまいたいが、そうもいかなそうだ。悪魔を見据えると、バージルは再び閻魔刀を構えた。
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