本当に大事なもの 3

「買い忘れた物はないかな…うん、大丈夫そう」


買った物を確かめると、名前は家路への道を急ぐ。


「もう日が落ちてきた…最近、暗くなるのが早いからなあ」


季節柄、日が落ち始めると暗くなるのが早い。早めに買い物を済ませたつもりだったが、予想以上に日が落ちるのが早かったようだ。


「早く帰らなきゃ」


昼頃に依頼に行ったバージルは夜には帰ってくると言っていた。早く家に帰って夕食を作って、お風呂の準備をして、仕事で疲れて帰ってきた彼をちゃんと出迎えられるようにしなければ。駆け足で商店街を抜けた名前は、ふと足を止めた。


「…?」


何だろう、何かの気配を感じたような…。
名前が気配の感じた方へと視線を移すと、元々は建物が建っていたのだろう、更地のその場所に何か黒い物がいた。馬、だろうか。ユラユラと揺れる影のようなものを纏ったそれは、こちらを見つめたかと思うとニタリと嗤った。


「−っ!」


その瞬間、ぞわりと背筋に悪寒が這い上がる。あれは、この世の生き物じゃない。
あれは…


(悪魔…!)


自分にはバージルやダンテのように悪魔と戦う力はない、逃げるしかない。逃げようと名前が一歩後退った次の瞬間、悪魔が首を振ったと同時に悪魔の頭から二本の角が伸びた。


「っっ!!」


伸びた角が建物の壁に突き刺さる。とっさに避けて難を逃れたものの、恐怖で身体に力が入らず、その場に座り込んでしまう。身体が震えていて、とても立ち上がることはできなかった。


「…っ!」


影が落ち、顔を上げた名前は目を見開く。いつの間にか悪魔が目の前に来ていて、自分を見下ろしていたからだ。
悪魔はニタリと嗤う。


(嫌…)


怖くて動くことができない。声も出せずに震えることしかできない中、脳裏に浮かんだのは大好きな彼の姿だった。


(バージル…!)


悪魔が首を大きく振る。恐怖に名前がギュッと目を閉じた、その時。

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