本当に大事なもの 2
「ダンテ、いるー?」
「お、名前か。入れよ」
次の日、依頼に行くバージルを見送ってから、名前はダンテの事務所を訪ねた。ダンテは笑って快く出迎えてくれた。
室内に入った名前は事務机に置いてあるピザに気づき、呆れたように言う。
「またピザ食べてるの?そんなのばっかり食べてたら太っちゃうよ」
「依頼の時に動いてるから大丈夫だ」
「依頼なんてほとんどないじゃん、週休6日のくせに。はぁ…何でそんなに動いてないのに太らないのかな、本当、女の敵…」
自分なんて少しでも食べ過ぎたらすぐに体重に影響してしまうというのに、偏った食生活をしているダンテが全く太らないとは、世の中理不尽過ぎる。考えても仕方のないことか、とため息をつきつつ、名前は口を開く。
「それで、例の本は?」
「ああ、あれな。ちょっと待ってろ」
そう言って事務机の棚を漁ったダンテは赤色をした表紙の本を取り出す。
「ほら、これだ」
「ありがとー」
ダンテから目的の本を受け取ると肩にかけていた鞄に仕舞い、名前は踵を返す。
「もう帰るのか?」
「うん、帰りに晩ご飯の材料買っていくし、ここに長居するとバージルに叱られるから」
「もう少しここにいろよ…と言いたいところだけど、そうした方がいいだろうな。ここ数日、連続殺人なんて物騒な事件が起きてるし。俺の勘だが、あれは悪魔の仕業だ、暗くならない内に帰った方がいい」
「うん、わかってる。バージルにも言われたから」
テレビでその事件についてのニュースを見た時、バージルも同じことを言っていた。それ以降、出かける度に早く帰るように言われているから重々承知している。
「じゃあね、ダンテ」
「ああ、またな」
見送るダンテに手を振り、名前は事務所を後にした。
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