夏色ティータイム 6

もうすぐ15時、世間でいうおやつの時間になる頃。リビングのテーブルの真ん中には今日買ったばかりのティースタンドが置かれた。


「案外、やろうと思えばできるもんだな」

「ダンテさん、お待たせしました」

「おう」


ソファーに座って目の前の物を見つめていたダンテは、かけられた声に顔を上げる。ティーポットと二つのグラスが乗ったトレイを持ってこちらにやってきたリアラは、ダンテの向かい側のソファーに座り、テーブルの上にトレイを置く。


「お茶を淹れるので少し待っててくださいね」

「ああ」


リアラはガラスのティーポットを持ち上げ、ゆっくりとグラスに紅茶を注ぎ始めた。鮮やかな色をした紅茶がグラスに満たされていき、中の氷がカラン、と涼やかな音を立てる。


「はい、どうぞ」

「ああ、ありがとな」


どういたしまして、にこっと笑ったリアラは自分の分をグラスに注ぐ。準備ができると、リアラはグラスを持ち上げて言う。


「それじゃあ、頂きましょうか」

「ああ」


いただきます、二人で言ってティースタンドに手を伸ばす。
ティースタンドは淡い水色のレースのような縁取りの皿が二段になった物で、支柱は先が金の鍵のような形をしている。雑誌に載っていた写真に倣って、一段目は軽食のサンドイッチ、二段目には菓子を並べている。サンドイッチはキュウリのサンドイッチ、ハムのサンドイッチ、たまごのサンドイッチに、菓子はマドレーヌと店で買ったマカロンだ。
たまごサンドを口にしたダンテは満足そうに頷く。


「うん、うまい」

「そうですか、よかったです。遠慮せずに食べちゃってください」

「リアラはいいのか?」

「私は一つ二つ頂ければ充分です。それに、お菓子もありますし」


ダンテの提案で店に道具を買いに行ったのはお昼前で、事務所に帰ってきた時はお昼というには時間は過ぎてしまっていた。だからお昼ご飯は食べていない。自分はいいのだが、彼は自分のために動いてくれたのだから、彼には食べてもらいたい。だから彼の好きそうなハムのサンドイッチも作ったのだ。今日のお礼だということを伝えると、ダンテは目を瞬かせた後、苦笑する。


「そんな大したことしてねえよ。好きなやつがやりたいって言ってることを叶えてやるのは男として当たり前のことだろ?」

「そうだとしても、嬉しかったんです。それに…」


両手で包んだグラスを見つめ、リアラは口を開く。


「こうやってゆっくりと、自分の好きな時間を好きな人と過ごせるのは幸せだな、って」


店で顔を赤らめながら答えたのとは違う、自然と穏やかに、心の底から思って告げられた言葉。そう言ってへにゃりと頬を緩ませたリアラを、ダンテは無性に抱きしめたい衝動にかられたが、この穏やかな時間を壊すのはもったいないと自分に歯止めをかける。


「…そうか」

「うん」


頷いてグラスに口をつけるリアラの真似をするかのように、ダンテもグラスに口をつける。紅茶に溶け出したレモンとオレンジの酸味と甘味が口の中に広がって、少し気持ちを落ち着かせてくれた。


(まあ、今はいいか。…後で恥ずかしくなるくらい、抱きしめてやるけどな)


こっそりと心の中で呟いて、ダンテはハムのサンドイッチに手を伸ばす。
その後、しばらくの間ダンテに抱きしめられ、リアラが顔から湯気が出そうなくらい恥ずかしい思いをするのはまた別の話。



***
『夢見』のアキリ様へイラストのお礼&相互リンク記念小説です。完成が遅くなってしまい、すみません…。
「夢主の日常系のかわいい一面」ということで、私の思う夢主のかわいい一面を書いてみました!照れてるやつが多いけれど(^ ^;)アキリ様がかわいいと思ってくれるところがあればいいのですが…!
最後のへにゃり笑顔は破壊力半端ないと思います。無意識だから余計に。おじさんがんばったね、よくブレーキかけたね!最後のところ、かけてるか微妙だけど。自分のしたいことしてるような気がするけど←
個人的におじさんのちゃんと恋人として認識してもらってるの嬉しいってところ、かわいいと思います(笑)
茶こし持ってあげるシーンは入れるかどうか悩んだのですが、共同作業っぽくていいな、と思って入れました!なんか想像するとかわいい←
アキリ様、これからよろしくお願いします!

2017.07.11

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